垂直落下式サミング

劇場版 とある魔術の禁書目録 エンデュミオンの奇蹟の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

3.3
テレビシリーズのオールスターが総出演し、オリジナルストーリーで描かれる第一期禁書目録と超電磁砲の集大成のような劇場版だった。
禁書目録と超電磁砲のふたつは時間軸が異なっているので、今回の物語のなかでは交わりそうで交わらない。多くのキャラクターにしっかりと見せ場が設定されていて、二者が同じ問題を解決するために動いていくのが本作の見所だ。
作られた世界に生きるものたちの日常を覗かせてくれるのが、こういった作品の良さ。このシリーズの大きな魅力は、彼らが住む「学園都市」という町に強い憧れを抱かせてくれるところ。超能力開発をうける学生たちが、この未来都市にまとまって暮らしているという少年の夢のような舞台設定に愛を感じる。
女の子たちがみんな可愛らしく個性的なのもいい。ロリから巨乳美人まで選り取りみどりだし、皆がみな主人公にばかり靡かないのもいい。特に佐天さんは真っ当な快活さで、妙に達観していたりド変態だったりする友達とは違った年相応の魅力がある。
不満点としては、テレビシリーズでは「コイツが弱点だから勝てた」とか「ここでこういう選択をしたから上手くいった」と言うような、超能力バトルらしい戦いかたをみせてくれるのが面白い部分だったが、今回はそれが希薄だった。前方に高火力を撃ち出すわかりやすいアクション的な見せ場のほうしか重視されてないのは残念。派手なのはいいのだけど、その行為に目的が見えないと冷める。
ストーリーについても、歌が鍵を握るという展開や、アイドルの衣装を身にまとったヒロインが歌って踊る画面なんかがマクロスっぽくて、どうにも禁書らしさが薄れていた。
文句が多くなってしまったが、夜景の綺麗さは一見の価値あり。色の使い方が他のアニメとは違うんだろうか。建ち並ぶビル群が発する光は、どこか艶かしいような色合いで、この世界にあるどの都市よりも未来的だ。
典型的な箱庭型ファンタジーだが、これがヒットしたのはラノベがギリ現実を生きていた時期なんだと思う。これより後に流行るのはハッキリと「異世界」を物語の舞台にしたものが多いが、『とある』の世界はあくまで「SF」の域に一応はとどまっているようだ。
それにしても、原作発売からは10年以上も経っちゃってるんだなぁ。アニメに出てくる電子端末などはかなりスタイリッシュなデザインだが、登場人物たちが持っている折り畳み式のガラケーに時代を感じる。
上条さんも最近見ないタイプの主人公になってしまった。人情派やれやれ系、いいじゃないですか、なろう系より好きだけどな。