垂直落下式サミング

私の奴隷になりなさいの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

私の奴隷になりなさい(2012年製作の映画)
3.5
出版社に転職した男が、職場の先輩である人妻に好意を持つ。気をひこうと懸命にアピールするも、清楚で身持ちの硬い彼女には相手にされず。しかし、そんなある日、彼は彼女から思いもよらない誘いを受けることになる。
年上の女の人は、小僧の口説き文句なんか何もかもぜんぶお見通しな感じ。壇蜜のつんけんした妖艶さに笑みがこぼれてしまったけれど、どうしたって手におえない夜の住人とのつながりが明るみに出るにつれてゾクゾクッとしてくる。
自分が認識している世界の本当の姿は、まったく違うものかもしれない。あるいは、現実と地続きのところにインモラルな非現実は転がってる。もしかしたら、ふだんキリッと仕事してるあの人も裏では…、デバガメな妄想がより身近に感じられた。
壇蜜の裸体に影を落とす照明や、遠くからあおる引きのショットなど、AVではみられない美しさだった。
相手との行為をビデオカメラにおさめる壇蜜の不倫。結局それは、徹底的に自己愛の成就でしかないと、わかっていても、男は寝ても覚めてもそんな彼女にひかれてしまう。
今まで、女を単なるセックス相手にしか思っていなかった男が、場数も経験も数段上の年上の女性に自分がそう扱われることによって、人生や生活に甚大なダメージを与えられてしまうところは、現実と地続きの現代的なホラー。若いころ、こういう手におえない世界の住人とエンカウントしちゃったら、人はぶっ壊れちゃう。
「絶対に手に入らないモノを望み続けてしまう人」のはなしが好きだから、恋愛映画とかは常にそういう目でみてしまうなあ。お互いに、カラダはもうこの人じゃなきゃ満足できなくなっちゃってるのに、本当の意味で心は通じあわない不健全なカンケイに萌えてしまう。