るるびっち

追憶の女のるるびっちのレビュー・感想・評価

追憶の女(1942年製作の映画)
3.6
ダメ・クズ男を描いた映画は沢山あるが、ダメ・クズ女を描いた映画は少ないと以前書いた。
けれども本作は、クズ女がビッチぶりを発揮して最高である。

こんな昔に、ちゃんとクズ女を描いた映画が存在するのは素晴らしい👏👏
但し、演じられる女優は限られる。
その最高峰なのがこの人、ベティ・デイヴィス だ。
我儘、強欲、嘘つきで自己中。

チャールズ・コバーン演じる強欲な伯父と馬が合う。
強欲同士で意気投合するが、彼女が後半追い詰められた時、伯父は余命半年でそれどころではない。
伯父に助けてもらえないと解ると手の平返す。
「もう充分生きたでしょ、わたしはまだ若いのよ。(伯父さんは)自分のことしか頭にないのね!!」
と、叫ぶ。
場内爆笑ですよ。
吐いた唾は己に返る。自己中はあんたのことだよ。
悪女ながら、どこかコケティッシュ。
こういう役を、生き生きと演じて素晴らしい。
けれど、どうしてもやりすぎてしまうし悪女という役割になっている。
そこまでやらないで、彼女の意見も共感できる程度のダメ人間としての女性を描けたら良いのに。
悪女という役割になってしまうと、絵空事になってしまうのだ。

同時にシネマヴェーラ渋谷で観た『生まれながらの悪女』のジョーン・フォンティンは天然系悪女で、人の物を奪うのが天然なのか打算なのか初めは分からない。
これが最後まで役割ではなく、ひとりの女性の不可思議さとして描けたら名作になると思った。
これは現在描く価値がある。
役割ではない悪女。役割ではないクズビッチを描く。
それこそが人間の弱さ愚かさを描くという意味で、真の女性(人間)を描く傑作になるだろう。
そう、るるびっちは思うのであった(チャンチャン👏)。
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