horahuki

恐怖の雪男のhorahukiのレビュー・感想・評価

恐怖の雪男(1957年製作の映画)
3.6
謙虚さを忘れるな!

ハマーフィルムの傑作『Quatermass』シリーズの1と2を手掛けたヴァルゲスト×ナイジェルニールの黄金コンビによる雪男映画。と言ってもヴァルゲストによるとナイジェルニールは映画版『Quatermass』の脚本に関与していなかったらしいけど…😅

本作は『吸血鬼ドラキュラ』や『ミイラの幽霊』と言ったハマーを代表する古典リメイク作の前(『フランケンシュタインの逆襲』の後?)に製作されているものの、既にその原型を見ることができる。特に『ミイラの幽霊』で顕著なことだけど、西洋人視点で見た「秘境の地」へ向けられる好奇の目と、それを我が物顔で利用しようとする植民地主義的な意識が本作にも強く根付いている。

本作の舞台はヒマラヤ山脈。チベット仏教の村に植物研究のためにやってきたローラソン博士は、山奥にいると噂される雪男の捜索が真の目的。後発でやってくる仲間のフレンド隊と合流し、現地ガイドのクサンたちと山奥へ。単に観察目的だったローラソン博士と、金儲けを目論むフレンドたちは次第に対立。そこへ雪男が現れ、捜索隊が次々に消されていく…といった内容。

ハマーのミイラシリーズはイギリスとエジプトの間の関係性を色濃く反映しているために、自国への戒めを込め、相手文化に対する精神性の尊重へと物語を運ぶのが定石だったけど、本作でも異教・異文化に対して、キリスト教的侵略を否定し、その精神性を尊重することを説いているのがハマーらしいし、50年代らしい。

自らの文化の尺度で図ると奇妙でしかないものでも、相手の文化からしたら心の支柱になっているものなのかもしれない。その文化と文化の間に存在する距離の開きを雪男という非現実がそのまま体現し、異文化における精神性の象徴として君臨させるのが非常に丁寧。そういう意味では本作はフォークホラーに近いものがある。

クラシックモンスターが暴れるという意味でのハマーらしさはないけれど、『吸血鬼ドラキュラ』以前の50年代SFホラー色を色濃く引き摺った本作も十分に面白いと思う。

昨日『ミッドサマーDC版』見てきたんだけど、全然客入ってなくて笑った🤣通常版は満席だったけど、やっぱりコロナの影響かな?
というか通常版は小さい劇場でクソみたいなスクリーンで最悪だったんだけど、DC版は少し広めでスクリーンの発色?も少しマシだったからよかった。それでも冒頭の写真に写ってるのが誰かもわからないような暗さには疑問だし、ホルガ到着時の衝撃が映画館で見ると半減以下になるのはどうなんやろね…。劇場向きじゃない気がする。完全に良さを殺しちゃってるよ…😭
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