Jeffrey

小さい逃亡者のJeffreyのレビュー・感想・評価

小さい逃亡者(1966年製作の映画)
3.0
「小さい逃亡者」

冒頭、ここは東京。父を訪ねて少年がモスクワへ旅立つ。ロシア人の若者との出会い、仕事を探し、列車に乗る。サーカス団の一員、日本国大使館、レニングラード、マトリョーシカ、バイオリン。今、勇敢な冒険が始まる…本作は「地獄門」でカンヌ国際映画祭最高賞パルムドール賞受賞した衣笠貞之助が歴史上初のソビエト連邦との合作映画をエドワールド・ボチャロフと監督した一九六六年の作品で、京マチ子、船越 英二、ユーリー・ニクーリンが出演していて豪華だ。こちらもレンタルされておらず、角川DVDを購入して初鑑賞したが素晴らしい。東京からモスクワへ。まだ見ぬ父を求めて千キロを小さな子供の大きな冒険として描いている。

さて、物語は生まれてすぐに両親を失い、孤児になった十才の少年、川間健は叔父で流しのバイオリン弾きの野田に育てられていた。学校での成績は優秀で、特にバイオリンと絵には非凡な才能を見せた。芸術家だった父の血筋をひいているに違いなかった。ある日、健は野田から父が生きていてモスクワにいると聞かされる。健は一人モスクワに行くことを決意する。そんな時、ボリショイサーカスが来日し、健は道化師のニクーリンと出会い、モスクワに連れてって欲しいと頼み込むが、誤解からすれ違いになってしまう…と簡単に説明するとこんな感じで、残酷な大団円を迎える作品であった。というか自分好みの終わり方をしていなかったのがちょっと心残り。あのラストは絶対に〇〇して欲しかったよ二人を…


本作にも宇津井 健が教師役で出ていた。当時の日本のネオン街の数々の看板が懐かしい。SEIKOの時計などを見栄えが良い。冒頭シーンで子供の取り締まりをしている警察官を発見して逃げる花売りの少女の場面など印象深い。それにニクーリンと健が控え室で鉢合わせする場面で、真っ赤な帽子を手でとって軽く会釈する場面はすごく可愛らしい。にしてもロシア人の若者との交流だったり、工場勤務の大人との交流だったり、様々な出来事を得て成長していく少年の姿が良い。モスクワやレニングラードの歴史ある景観も美しい。
Jeffrey

Jeffrey