140字プロレス鶴見辰吾ジラ

マルコヴィッチの穴の140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

マルコヴィッチの穴(1999年製作の映画)
4.0
ジョン・マルコヴィッチになれる穴をのぞくことによって、自らのコンプレックスを解放して、そして穴に堕ちていく男の奇妙な物語。本作の演出がどうこうというよりも、「もしも自分が選べたら」「もしも自分が変われたら」という映画体験という枠から解放されて妄想に浸れる世界観が印象にこびり付いている。今やSNSの台頭により、ネット上の別の性別を演じることから、他人のアカウントを乗っ取り、そして他人に成りすますことも可能となっている。ただ他人に成り代わって幸福な人生を送ることに至れないコンプレックス剥き出しの私やそれに近い同族たちの負のエネルギーを上昇気流にこの映画をもてはやしたい。興味本位から始まり、病み付きになり、依存していき、そして文字通りに穴に堕ちた哀れな男の負のエネルギーを纏ったラストカットまで、常に心の奥で巣食っている「隣の芝生は青い」という名のがん細胞を我々は飼いならさなければならないし、いつかそれを解放したいという怨念のような感情を疑似体験させてくれるような変な映画だった。

だから好きだ。
連れていって欲しい世界観でもある。