憎むな
殺すな
赦しましょう
川内康範
それは、確かにそうなんだけど、実際、自分の身に降りかかったらどうだろう。そう考えさせられました。
1975年。
北アイルランドでは、反目するプロテスタント系住民と、カトリック系住民が、いつ終わるかもわからない闘争をくりかえしていました。
プロテスタント系民兵組織UVFのメンバー、といっても、下っぱの下っぱ、17歳の少年アリスター
は、「いっちょ、この組織でのしあがりたいんで、やらしてもらいますわ!」と、かっこをつけるために、覆面つけてカトリック系のお家に押し入ります。
どうやら、憎きカトリックを撃ち殺すと、組織では出世出来るらしいのです。
どこかの国の反社と一緒ですな。
標的のお家の前に行くと、10歳くらいの少年、ジョーが、ヘラヘラとサッカーの練習をしていました。
ジョーは、標的の弟でしたが、アリスターには、そんなこと分かりません。
二階に上がると、標的の胸に、鉛の弾をぶち込みます。
一発、二発、三発、ついでに写真立ての猫にも一発!
やることやったら、とんずらです。
アリスターは、その時、下にいたジョーと目と目があいますが、逃げるのにいっぱいいっぱいだったので、ジョーに鉛の弾をおみまいすることはせず、盗んだフォードで走り去るのでした。
悲惨なのは、この後のジョーです。
母ちゃんに、
「お前のせいで、あんちゃんが殺されたんだよ!このあほ!」
と怒鳴られ、ボコボコにされ、心の傷が残ってしまいました。
その後、アリスターは、警察に捕まり、12年服役。
大人になった彼は、自分の犯した事が誇れることではない事を身をもって知り、遺族に贖罪をしたいと思うようになりました。
そして、アリスターとジョーは33年後、テレビのドキュメンタリー番組で、再会する機会を得ます。
しかし、その二人の想いには、激しい乖離が。
赦しを乞いたいアリスター。
緊張しながら、ジョーを待ちます。
一方、自分の人生を滅茶苦茶にされたジョー。
ジョーは、奥さんと二人の女の子に恵まれた生活をしていましたが、アリスターに対する怨みは忘れません。
ジョーは、憎しみを込めたナイフを懐に忍ばせ、会見の場に、臨むのでした……。
二人の心に、
憎むな
殺すな
赦しましょう。
この心が芽生え、新たな人生をやり直せる日が本当に来るのか、どきどきしながら最後まで観ました。
観終わったら、自然に涙が出てきました。
良作だと思います。