熊犬

ウソから始まる恋と仕事の成功術の熊犬のレビュー・感想・評価

3.8
【"嘘つきの発明"という光る原題を、邦題が台無しにしてるパターン】

原題 : The Invention of Lying

"嘘"が存在しない世界。"嘘"という概念がそもそもなく、人々は本当の事以外を話す発想すら存在しない。
そんな世界で映画の脚本家として働くマーク・ベリソンは、恋愛も仕事もうまくいかずに行き詰まっていた。そんな中、ひょんな事から追い詰められた彼はついに世界で初めての"本当でない事"を言ってしまい、世界で唯一"嘘"という概念に気づいてしまう…果たして彼はこの"嘘をつく"能力で人生を逆転できるのか!?
…な映画。

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なんといっても設定が光る映画。"嘘"というものが存在しない世界で、初めて嘘を吐いた男の話。それだけでもう見たくなる。頭で書いたけど、折角の設定を前面に押し出した原題の"Invention of Lying"(嘘つきの発明)の良さを、邦題が台無しにしたパターン。"嘘から始まる恋と仕事の成功術"ってよ。

この映画の最初の見どころは何といっても"嘘のない世界"そのもの。
嘘がない事で人々は思った事をそのまま口にしてしまい、その本音のやり取りが面白い。デートでも平然と相手の悪口を言ったり、言い訳なんて一つもないドストレートパンチの応酬。なんだか気まずそうにドストレートパンチを打つ感じとかも笑える。
また、主人公は映画の脚本家なんだけど、嘘=フィクションが無い世界の映画が…そうなるかよ!って感じで面白い。
こういう世界観の作りこみ方が、いちいち視点が細かくて、いかにもコメディアン(リッキー・ジャーヴェイス)が作った映画って感じ。

次に"嘘"をつき始めてから。どんな嘘でも信じてくれる世界の可笑しさと怖さが描かれてて、ワンアイディアな映画らしい、ちょうど良い所をついて笑わせてくれる。適度にライトなブラックさもあって、爆笑というよりもクスっと面白い感じの良作コメディ。

但し、設定に頼り過ぎた側面があるというか、それ以上の所が出来なかった印象はある。もう少しこの設定ならではの捻りだったり、面白いポイントがあれば…と思ってしまうところはある。というよりも、いたるところで小規模なコントをいくつも繰り広げた感じの映画で、一本の長編としての展開がない、あるいは展開が序盤以降はちょっと緩やかすぎて。

尚、世にも奇妙な物語(及びその原作漫画)に酷似した設定の話がありますが、念のため言っておくとそれよりも結構前の作品。あっちはサスペンス的に振っているのに対して、こっちはしっかりとコメディーに振ってる。

■本日のビール『ジュゴン』
醸造所:ひみつビール (日本 / 三重)
小麦を使ったホワイトIPA。大量のホップによるマスカットやピーチ、そしてトロピカルな味わい。それが小麦によるなめらかな口当たりで流れ込んでくる。
今回の映画になんでジュゴンを選んだかって?それはまあ、主演のリッキー・ジャーヴェイスを見ててなんとなく…ええ、なんとなくですよ。
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