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左利きの女のSariのレビュー・感想・評価

左利きの女(1977年製作の映画)
3.7
ヴィム・ヴェンダース製作、ヴェンダース監督作で脚本を担当してきた作家ピーター・ハントケが自身の小説を映画化した作品。

ブルーノ・ガンツ演じる夫が、西ドイツから北欧に仕事で長期出張をして家に帰ってきた。妻=左利きの女に、「絆を確認して、逆に君のいない生活を試してみたくなった」と言う。左利きの妻は「啓示を受けたから別れよう」という謎の宣言をする。

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専業主婦であった妻が、自ら望んでシングルマザーになったものの、自分の人生の意義が見い出せず、ますます内にこもってしまう女性の不安と葛藤がシリアスに静かに描かれている。

妻が子どもと映画館へ行き、日本映画を見に行く。家族で「おちゃらかほい」をやりながら泣いていた女がやがて微笑む、という劇中のシーンを延々と見ており、小津安二郎の写真が壁に飾ってある場面があるところから考えても、この日本映画は小津の初期の作品だろう。

若いジェラール・ドパルデューは、妻が電車に乗ろうとする駅で一瞬のワンシーン出演。
ヴェンダース監督作の常連俳優マルクス・ミューライゼンも脇役で出演。

駅が度々登場する風景や、女性の孤独感と心情描写に重ね合わさるところは、シャンタル・アケルマン監督『アンナの出会い』と作風が近い。ロビー・ミューラーによる撮影が、詩的で美しい。
主演エディット・クレヴァーがアケルマン作品におけるオーロール・クレマンと雰囲気が似ており、無表情の良い演技を披露している。
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