ようやく見ることができた。それなりに名のあるカントリー歌手（ハンク・ウィリアムズがモデルらしい）を演じるリップ・トーンが周りに迷惑かけまくって誰にも共感されず、酒と薬に溺れ、ただただ虚しく死んでいくだけの傑作。軽やかに歌うシーンとかほとんどなくて、リップ・トーンが所かまわず悪態ついて安い女とヤってブチ切れる103分。こと切れる瞬間の車内からラストまで、70年代アメリカ映画の儚さふくめて唖然とするほど素晴らしいよ。

だらしない母にはお薬わけてやり、母の批判する仲間には即クビ言い渡し、飽きた女は車から放り出し、捨てた妻子の住む家に石投げつけて…最初から最後まで周りの人間傷つけまくってやり散らかし続ける人気シンガーのリップトーン…。無責任に逃げて勝手に死ぬラストは虚無すぎて感動しまくった。あんなどうしようもない人間なのにモーテルで書いた詩が繊細で切ないこと。主演がリップトーンなだけにまたなんの感情移入もできないところもまたたまらなく好き。いやーこんな映画最高だ。いきなりオムレツの話題繰り出して助手席からすぐ取り出した鉄のフライパン撫でる運転手のアイツもよかったし。

2020.09.26