「アメリカの恋人」と呼ばれたメアリー・ピックフォード主演のまさに手に汗握るような活劇映画「雀」。これはオススメです。
淀川先生によるとのちのディズニー映画に大きな影響を与えた作品だそうな。
サイレント期のスターには比較的観る機会がある人もいれば、反対に全く観る機会のないスターも居る。
メアリー・ピックフォードなんかは「雀」か「じゃじゃ馬ならし」ぐらいしかソフト出ていないんじゃなかろうか(あと「シンデレラ」ぐらい?)。
本作は当時34才だったピックフォードが10代の少女を演じていて確かに間近で見るとそれ相応の齢なのだが、すごく背丈が低いので他の大人の役者と比較すると確かに少女に見える。
さて本作は恐ろしい幼児虐待者に監禁された子どもたちの脱出劇を描く。
南部の人里離れた湿地帯に一軒の家があった。
そこの主人は貧しい家から預かったり誘拐したりして捕まえた子どもたちを強制労働させていた。
この男が見るからにして不気味な容貌で、長身痩躯で眼がギョロっとしてまさに死神のよう。
しかも家の周囲は底なし沼で囲まれていて、使い物にならなくなった子どもは沼に投げ込んで殺していた。
開巻まもなく、預かった家の親から送られてきた人形をぐしゃっと握りつぶして沼に捨てるシーンが印象的。
ピックフォードは虐待されている子どもたちの最年長で、明るく振舞っていつも年下の子どもたちの面倒を見ていた。
ある晩、一番年下の子が栄養不良で天に召されてしまう。悲しみに暮れる中、男の一味がまた子どもをさらってくる。
このさらわれた女の子が玉のように丸々していて可愛いのだが、実はある富豪の娘で新聞にでかでかと誘拐事件の記事が載ってしまう。
発覚を恐れた男は証拠隠滅で誘拐した子どもを沼に沈めようとする。
ついに我慢できなくなったピックフォードが子どもたちを連れて家を脱走する。
追いかける男たち、そして獰猛な番犬。
子どもたちは底なし沼を渡りきり、やっとホッとしたところ待ち構えていたのはワニの群れがいる湿地帯。
木によじ登って逃げる子どもたちに大きな口を開けて待ち構えるワニが本当に恐ろしい。
果たして子どもたちは無事逃げ切ることができるかどうか、最後の最後まで目が釘付けである。
ちなみにタイトルの「雀」は聖書に出てくる言葉だそうな。
「一羽の雀さえあなたがたの父のお許しがなければ、地に落ちることはない」という一節から、「神の加護を信じよ」「むやみに心配するな」という意味だという。
■映画 DATA==========================
監督:ウィリアム・ボーディン
脚本:C・ガードナー・サリヴァン
製作:メアリー・ピックフォード
撮影:チャールズ・ロシャー
公開:1926年5月14日(米)/不明(日)