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カフカの「城」の傘籤のレビュー・感想・評価

カフカの「城」(1997年製作の映画)
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TSUTAYAではレンタルしてないし、サブスクでの配信もなし、プレミア価格の為DVDを買うのは躊躇する状態……だったのですが、相互さんからのアドバイスで図書館を探してみたら普通に置いてました。ラッキー。
というわけで『城』です。カフカです。不条理です。未完の大作ですってよKさん。ミヒャエル・ハネケによって製作された本作は、感情を抑えた演技、唐突な暗転と場面転換、城にたどり着けない測量士Kを中心とした村での状況設定、いずれも原作のつかみどころのない雰囲気を上手く再現していると思います。娯楽性は薄く、原作に興味がない人は眠たくなる可能性が高いでしょう。しかしだからこそ、本作は凡百の映画に埋もれることなく、特別な存在感を放っています。もどかしさを覚えるほど話は一向に前に進まず、何かの教訓を見いだそうとしても、ふわりふわりと靄のように雲散霧消してしまう。こういうとき私は、「その特徴自体」を楽しむことにしています。普段見慣れている映画に比べて「愛想がない」と感じるのは、見方がわかっていないか、そこにこそ作り手の意図があるのだと考えた方が豊かです。流され、成り行きのままに村で生きていくこととなるKの存在は、カフカの意図がどうであろうと、間違いなく現代人の多くが自己と同一化してしまうものを持っていて、なおかつ語り尽くせない「社会」や「生活」や「思考」を文字として、そして映像に置き換え、さらに語り尽くせないことを「良し」とした作品。ハネケはきっとそういった「もどかしいこと」に『城』の文学性を見いだしたのでしょう。その思惑通り、映画は全てを語ることはなく、どこか現実感の乏しい風景が現出しています。まるで人生の終わりに見る走馬灯のようにつなぎ目なく断片的に物語は語られ、プツッと暗転、幕を閉じる。それは夢からの目覚めか、死の仮想か。この気だるく微睡むような感覚を幸せに感じるかどうかで評価は大きく分かれるでしょう。私?私がこの映画を観てどう思ったかの言葉は(暗転)
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