Benito

デューン/スーパープレミアム[砂の惑星・特別篇]のBenitoのレビュー・感想・評価

4.5
【 貴重な映像資料としての特別編集版 】

1984年の劇場公開137分版を、再編集し追加シーンと合わせてアメリカのS.F専門チャンネルが放送した約189分版。画面サイズは4:3となって、画質の解像度はややシャープネスが弱い状態に。監督リンチが目指した4時間版には近づいたかも知れないが、まだ短いし、色々改変されたから、監督自身がこのバージョンを認めなかったことで架空の映画監督名アラン・スミシーにして放送されてしまったのはやむを得ないのかな、と思う。

こんな経緯があった作品ではあるけど、劇場公開版「砂の惑星」に心酔した者としては貴重なバージョンとして楽しめた。リンチが目指した世界には到達していないけれど、未公開シーンが40数分もあるというのは大きな資料的価値。

今回のバージョンは砂の惑星 日本公開30周年記念特別版Blu-ray BOXの特典で観たのだけど、その他特典にリンチのインタビューも入っていて3年半撮影した!キャストも自信ある!とコメントしたり、原作者のフランク・ハーバードの撮影現場で嬉しそうな表情とか、プロデューサーのラウレンティス親子(父と娘)の姿、と撮影直後のまだ皆が和かな興味深い映像が満載だった。劇場公開では苦労したが、撮影時は楽しく出来ていた事が分かる。
 

<付録 : 追加されたと思われるシーン>
・劇場公開版にあった皇帝の娘イルラン(バージニア・マドゼン)のどアップのナレーションがまさかの全カット。ただし、意外と登場人物の似顔絵が上手いイラストカットによって劇場版以上にべネ・ゲセリット・スクールと宇宙ギルド・スクールについてなど沢山の歴史を細かく説明してくれる。シュールなタッチが癖になる笑。
・ギルド(水槽に入った不気味な生き物)が来る前に皇帝と教母の会話が長くなったし、台詞から皇帝が200歳と判明。
・ポールの母ジェシカが父である公爵レトに娘が欲しいと抱き合うシーンが追加。
・ポール一家がアラキスに宇宙船で到着した時、それをフレメン一派が双眼鏡で覗くシーンが追加。
・ユエ博士が死体解剖中に死体からハルコネンからの密書を取り出しこっそりと読むシーンが追加。
・ハンターシーカーによるポール暗殺未遂の責任を取るため、相談役ハワトがレト公爵に辞表を出したいと言うシーンが追加。→2020年版には存在していたシーン。
・家政婦となるフレメンの小柄な老婆が刀を持ってジェシカが道女かどうか、ポールが伝説の救世主かを確かめるシーンが追加。→2020年版には存在していたシーン。
・ポールの側近ガーニーが楽器バリセットを演奏するシーンが追加。ギターのようにTOTOアレンジか、、→2020年版も撮影されたがカットされていた模様。
・カインズ博士が唾、公爵レトが水で契りを交わすシーンが追加。→2020年版は博士でなくフレメンのボス ハビエル・バルデムが唾吐き。
・ポールとフレメンのひとりジャミスとのナイフでの決闘シーンが追加。→2020年版では存在していたシーン。
・そのジャミスが火葬されるところに妻と子2人が茫然と見守るシーン。更にジャミスの火葬後に搾られた水をポールが受けとるシーン。それぞれ追加。
・フレメンが砂虫の幼虫(造形が衝撃的)を水槽に飼っていて、胆汁みたいなもの搾り出して生命の水を作るシーンが追加。

他にも細かい追加シーンは多数あって、どれだけカットしなければならなかったか、当時のリンチやプロデューサーの苦悩、そして映画会社との悶着が想像できる。

そして、TOTOの主題歌'Take my hand'が流れ、海原と共にキャストが映しだされるエンディングは美しい。
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