チッコーネ

ネオンの中へ陽が沈むのチッコーネのレビュー・感想・評価

ネオンの中へ陽が沈む(1995年製作の映画)
3.5
民主化以降、資本主義の波に乗るIMF危機以前の韓国、というかソウルを描いた作品で、舞台は広告代理店。
この時期の韓国で、ヒロインの人間的成長を描く女性映画を撮っていた監督の先鋭に驚かされる。
加えて「民主化運動で大きな傷を負った世代」へのシンパシーも多分に込められており、韓国版『天安門、恋人たち』のような雰囲気もあった(※制作は本作の方がずっと早い)。

CM撮影場面や、生活感のない男性主人公の居室美術はさすがに時代を感じさせるが、制作当時に「先端」と捉えられていた美意識は伝わってくる…、時代の移ろいに合わせ、感覚を磨き続けていたからこそ、監督は約20年後の『青い塩』でも洗練された絵が撮れたのだろう。
編集もスピーディで観進めやすく、アフリカロケまで行われていた。

惜しむらくは男性主人公。
初老の管理職にしか見えないムン・ソングンは、映画が本来持ちえたはずのロマンティックな雰囲気を、大幅に後退させている。
お尻丸出しのフルヌードも、サービスショットとして全く機能していなかった。
この時期の韓国映画界にはまだ、イケメンスターが出揃っていなかったこともあるのだろうが…、ミンシク先生をキャスティングすれば良かったのに。
またイ・ビョンホンが出ているらしいのだが、あまりにチョイ役過ぎて、どこにいたのかわからずじまい…、アフリカに派遣されたモデル役?