櫻イミト

ブラック・ビューティー/黒馬物語の櫻イミトのレビュー・感想・評価

3.0
世界で最も読まれている動物小説「黒馬物語」(英 1877)の9度目の映画化。馬による一人称語りの自叙伝。「シザーハンズ」(1990)「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」(1993)など多くのティム・バートン作品を手掛けた脚本家、キャロライン・トンプソンの監督デビュー作。

19世紀後半のイギリス。牧場で生まれた黒い牡馬ビューティーは、やがてゴードン家の馬となり、馬車や乗馬の仕事がない時は仲良しの雌馬ジンジャーや調教師見習いの少年ジョーと楽しく暮らしていた。しかしゴードン家の移住が決まり、ビューティーは伯爵家に売られていくことに。それは転々と持ち主の変わる運命の始まりだった。。。

同じ原作の「ブラック・ビューティー」(2020)を先に観たためか、本作に物足りなさを感じてしまった。最も大きな原因はビューティーと少年ジョーが絆を育む描写が薄かったこと。この前提が弱いため物語の求心力が薄かったように思う。

一方、馬の運命の過酷さはシビアに描かれてた。後の「ブラック・ビューティー」と同じく、仲良しだった牝馬ジンジャーとお互いに馬車馬として路上で再会するのだが、その描写は至って残酷だ。原作がどのように描かれているかわからないが、このあたりはティム・バートンの世界と通ずるところでもあり、本作を先に観ていたら本作全体の印象も違ったかもしれない。

本作でビューティーを演じた馬は、ハリウッドで活躍したタレント馬とのこと。確かに”名演”を感じさせる動きがたくさん見られた。ただ本作のテーマ上、厳しい調教を受けたのかなと余計な心配も頭をよぎった。

※「黒馬物語」の最初の映画化は1917年。続いて1921年にリメイクされている。
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