neohetare

山椒大夫のneohetareのレビュー・感想・評価

山椒大夫(1954年製作の映画)
4.6
溝口作品鑑賞6本目。
美的観点において監督の最高傑作なのではないか。

肝心な所で使われる長回しが凄い。
ただ居ること/あること/運動そのものに意識を向けさせる長回しではなく、時空間の連続性を保つことが人物の感情の連続性をキープすることに貢献しており、ふつふつとした漸近的な感情の変化を収めることに成功している。
安寿が母の歌を伝え聞くシーンと厨子王が母と再会するシーンにはその凄みがあった。

また安寿が入水するショットと安寿を案ずる老婆のショット等遮蔽物でフレーミングした構図も素晴らしかった。

溝口健二はどの作品を観ていても社会派だなと感じさせてくるが、1人の人間の苦悩を見つめた先に社会の問題を避けては通れなくなるという感があり、根っこはヒューマニストだなとも思う。

あとは『西鶴一代女』を観たら溝口週間を一度終わりにします。
neohetare

neohetare