枕を掴む妻の手が何とも艶かしい。
技術的に揺らいでしまうカメラに馬車が映るラストシーンは、僕が知る上でもっとも美しいものかもしれない。
発狂のすえ、山から身を投げる少しだけ自業自得の男は、死ぬほどの大罪は犯していないだろうに、悲しまれることはなく、彼を置き去りにした男が咎められることもない。そんな哀れな好色家をシュトロハイム自らが演じていることが素晴らしい。チャップリンもそうだが、映画作家には、こんな自己犠牲の精神が必要だ。まあ、シュトロハイムが良くも悪くも当たり役であることは、とりあえず不問にしよう。