滝和也

ゴーン・ベイビー・ゴーンの滝和也のレビュー・感想・評価

ゴーン・ベイビー・ゴーン(2007年製作の映画)
4.0
ボストン、ここは
俺の街だ。
俺たちは失踪人の
捜索専門の探偵。
今日も依頼が入る…

俺は子供が好きだ…
その言葉の裏側にある真実
選択を迫られた彼は…。


「ゴーン・ベイビー・ゴーン」

ベン・アフレックの初監督作にして、ハードボイルドミステリーの佳作。アメリカの現在の問題のリアルと犯罪、犯罪捜査のリアリティがミステリーと融合しており、見事な仕上がりを魅せる。ベン・アフレックにより集められた盟友達の演技も素晴らしい。

アマンダと言う幼女が連れ去られた。母は狼狽し、マスコミは騒ぎ出し、街は騒然とする。進まない捜査に叔母により、失踪人捜索専門の探偵パトリック&アンジーが雇われる。子供の為に疾走る二人の前にあった真実とは…。

貧困、薬物汚染、ネグレクト、幼児虐待、小児性愛、警官汚職…法の網をかいくぐり、最後のセーフティネットからも漏れ落ちる…子供達の幸せを実現できない社会。アメリカの現実(日本も追いついてしまったが…)を内包したリアルなシチュエーションとリアルなストーリーテリング。ハードボイルドの代表である探偵が主役でありながら、現実に埋没する作劇である前半。

その前半を前振りとせんばかりの、後半のストーリーの見事な動き。正に脚本の妙とも言える豪快なる展開。リアリズムを飛び越えた作劇が見事。二転三転するストーリー…その背景と動機にある、あまりにも悲しい事実と現実。

そして現実と法の二者択一をせまられる探偵の背中に正にハードボイルドを見る。ハードボイルドの基本はやせ我慢だとした解釈がある。正にそれ…。あまりにも悲しい結末に何が正しいのか、見えなくなる…(T_T)

ベン・アフレックの才能による見事なミステリー。ちょっとクリント・イーストウッドの影響を受けてる気がしますね。主演に弟くんケイシー・アフレック。頼りなげに一見見えるが信念を持つ強き探偵。相棒であり恋人であるアンジーにミシェル・モナハン。ミシェルの普通さが探偵を現実に繋ぎ止めてますね…ただ…それ故にラストは…(T_T)

幼女のイカれた母…演技が見事なエイミー・ライアン。部長刑事にモーガン・フリーマン、部下にエド・ハリス、ビバリーヒルズコップのジョン・アシュトンと言う演技派が脇を固め…それ故に見事なアンサンブルを見せてくれる。

ミステリー映画批評で高評価だったので随分前から見たかったが…重そうなので塩漬けにしてしまっていたのだが、これは名作でした。ミステリーファンにオススメできる内容ですね(^^)
滝和也

滝和也