けーはち

黒部の太陽のけーはちのレビュー・感想・評価

黒部の太陽(1968年製作の映画)
3.5
世紀の難工事、関西電力・黒部ダムの建築。そのトンネルの掘削作業だけをただひたすらに再現する。俳優は三船敏郎×石原裕次郎という二大スターを据えて人間ドラマにも熱を入れ、迫力ある撮影のため大規模なセットを用意し、企業タイアップ映画の魁ともなった。高度経済成長期、日の出の勢いの本邦のパワーを感じずにはいられない、あまりにも質量の分厚くドデカい昭和の大作。

近代的工法を学んだ設計屋として戦前からの土建屋(非科学的・人命軽視・根性論)の父親と対立する石原裕次郎のドラマが工事の合間に織り成されるが、最終的に和解や超克に至ったというよりは「同じトンネルのむじな」と呼ばれ、それを受け入れてしまうのは切ない。「プロジェクトX」で散々語られるごとく実現困難なドデカい事業を現場の献身的努力によりどうにかしてしまう事例は多々あり、いつかそれを美談や武勇伝にせずとも良い日がくると良いのだが……