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黒部の太陽のcamusonのレビュー・感想・評価

黒部の太陽(1968年製作の映画)
4.4
石原裕次郎の遺志で長いことソフト化されず、
見ることが困難だった作品です。

石原裕次郎について、リアルタイムでは、
小学生のころテレビ番組「太陽にほえろ」で見たくらいで、
顔に肉が付いていて無駄にスタイルがいい人という以上の認識はないのですが、
若い頃の裕次郎については、作品を見たことないにも拘らず
何故か苦手意識がありました。
(余談ですが、西部警察は見ていませんでした。
調べてみたらNHKの大河ドラマと重なっていたためでした)

本作では裕次郎氏は34歳ということもあり、
そこそこ落ち着きつつあるのか、画面から多少浮いた感じはあるものの、
気にするほどではありませんでした。


さて内容です。
高度経済成長期に電源不足に陥った関西電力の社運と
関西経済の命運を賭けた一大プロジェクト黒四ダム建設を描いた大作です。

三船敏郎は関電のプロジェクトの現場責任者。
石原裕次郎は熊谷組の下請けの手配師の息子で設計技師。

危険で無謀なダム建設に疑問を持ち、
下請け手配師の親父とは犬猿の仲の石原裕次郎が、
足が動かなくなった親父の代わりに
現場の陣頭指揮を執り奮闘するという話です。

3時間超という大作ですが、中だるみすることなく見れました。
というかむしろ、時間が足らず描き切れていない感が残ります。
工事だけでなく、発注者受注者間の腹の探り合い、腹を割った話、
主人公の恋愛やら、家族の病死やら、盛りだくさん過ぎて時間が足りません。

素晴らしかったのは、臨場感あふれるトンネル工事撮影です。
破砕帯に近づき、支保工が音を立てて軋む場面、
破砕帯にあたり、トンネル内を爆流が押し寄せる場面は圧巻です。
撮影自体も結構ムチャしてそうで、
高度経済成長期の狂気のようなものを感じ取れる気がします。

主人公たちは死者を一人も出さないのが目標とか言っているのですが、
人命確保のための体制がなってないというか、
技術的な裏付けがなく、管理が杜撰で技術が稚拙で、
これがせいぜい半世紀前の話というのに驚いてしまいます。
隙間だらけの木矢板で山止めしているのが泣けてきます。

この人命の軽い扱いは、大戦が影響しているように思います。
戦後復興期は、独特の時代の狂気みたいなものを
感じずにはいられないんですよね。
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