パン

実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)のパンのレビュー・感想・評価

4.4
見終わった…
さて、俺も総括するぞ!
本作は連合赤軍による山岳ベース事件とあさま山荘事件を中心に描いた作品だ。
連連合赤軍誕生までがわかりやすいので連合赤軍初心者にもお勧め出来る。

そしてこの山岳ベース事件、これはもう単純に思想とか組織とかそういう問題じゃなくて人間の狂気そのものだと思う。
日本の殺人事件史上ここまで頭のおかしい狂った事件はそうそうないだろう。

「山に行くのに水筒を忘れた!?総括するぞ」で12人ぶち殺すってどんだけ頭おかしいんだろうな彼ら、彼女らは。
この文明や法律から隔絶された山奥だからこそ起きた悲劇と言えるだろう。
それに女同士の妬みだったり、人間の面倒くさい部分が凝縮されててハリウッドのスリラー映画もビックリな内容だわ。
フィクションでもここまで狂った話はそうそうないよ。

特に主犯の森、こいつがリンチの元凶だ。
彼は高校時代剣道部で「稽古中に気絶して目覚めると世界が変わったように見えた」という本人の実体験から"対象者を気絶するまで殴ることにより共産主義化された真の革命戦士に生まれ変わることが出来る"というわけのわからん人格矯正法を考案した。
このリンチに参加しないものは同類扱いされ自分もリンチを受けることになる。
その結果対象者が死亡してもそれは対象者自身が共産主義化された革命戦士になりきれず勝手に絶望して勝手に死亡した敗北死である。
つまりこれはあくまでリンチではなく救済とのこと。

ところで彼が訴える真の革命戦士ってなんぞや?という話なんだが、森自身もよくわかってない。
だから具体的な説明も出来ない。
多分この場にいる人たちは誰ひとり真の革命戦士が何かわかってない。
誰もわかってない理想の自分になるべくリンチを受け、またはリンチに参加して死者12名。人間って怖いね。

ぶっちゃけこれって世界革命という時代背景や政府転覆という目的は何の言い訳にもなってないただの暴走だな。
当時の日本人もこれでドン引きして一斉に目が覚めたんだよな。
学生運動も下火となった。
やっぱり左も右も極端な奴は結局暴力に走るし、ただの人殺しとなるんだよな。

良くも悪くもこの時代の人々は現代人より政治に興味関心が強い時代だったというのもあるが、アメリカやフランスでは実際に大統領をデモによって退陣に追い込んだり、まあ当時のトレンドだったわけだよな。
それこそ今の若者がSNSとかショート動画に熱中してるようにこの時代はこれがモテたわけだ。
映画のいちご白書でも女子と知り合うために主人公の男の子が不純な動機でデモに参加したりしてた。

そういうファッション感覚の学生が多い中で本当に思想を拗らせすぎて活動にのめり込んでしまう人たちもいた。
実際当時の日本全体で国がひっくり返るような終末感や期待値があったようだし。
体制側も尋常じゃなく警戒してた。 

あの三島由紀夫も国家転覆の時代に備え非合法な武装組織の訓練を秘密裏にしてたくらいだからね。 
逮捕者が1000人2000人って半端ないでしょ。
今の日本じゃまずありえない。

この先も体制側と民間人がここまで揉めることってこの先ないだろうな。
みんな娯楽に骨抜きにされてるから。

しかしこれだけ高学歴で未来ある若者たちが日本のためとはいえ自分の人生を丸ごと投げ出しちゃうんだから凄い勿体ない。 
約束された勝ち組人生を捨ててまでこれをやってんだものな。

終盤で警察と一緒に雪山追いかけっこするシーンなんか爽やかで良かった。 
アメリカの警察だったら警官相手に発砲した時点でハチの巣にされてそうだけど全然撃ってこないよね。
日本の警察は発砲が厳しすぎ。

そして地獄の山岳ベース事件の後に追い詰められた残存メンバーはかの有名なあさま山荘に駆け込むというわけだ… 
一体こんな少人数で立てこもって何が出来るんだろうな。
英雄にでもなれると思ったのか。
彼らの殺人や人質を取るという行動は全て綺麗な言葉で正当化されちゃうのが面白いなと思った。

立てこもりシーン、低予算なのに臨場感の出るような工夫がしっかりと考えられてたな。  
結構な大作だったしまるで連合赤軍疑似体験映画だ。

そういや山岳ベース事件とかあさま山荘事件は映画になるけどテルアビブ空港乱射事件とか全然描かれないよね。
あれって多分世界で最初の民間テロだと思う。
世界中を悩ませているテロの起源が日本人というのはある意味誇らしいのか、それとも恥ずかしがるべきなのか…
パン

パン