Sayawasa

不安は魂を食いつくす/不安と魂のSayawasaのレビュー・感想・評価

3.3
初ファスビンダー!
„Berlin Alexanderplatz“初代作品(ドラマ)の監督という以外何も知らずに鑑賞。

„Das Glück ist nicht immer lustig.“
「幸せがいつも楽しいとは限らない」
冒頭の一言が作品のすべてを表していると感じる。いくら時代が変わっても、技術が進歩しても、人間にとって普遍的な感情や状況があること、そしてそれが決して美しくもなく、気持ちの良いものではないことがまざまざと浮かんでいた。

悲しいから考えるのか、考えるから悲しいのか。そしてエミのセリフ「優しさを持ち合えなければ無価値」が具体的に指すものとは。終盤になるにつれ、考えたいことで頭の中が溢れていった。
Gastarbeiter 政策に応じて、社会情勢が変わり、二人を取り巻く環境も変わっていく様が、なんともいえない。
社会との隔たりから、二人の間の隔たりへと変化するとき、彼ら自身が傷つけ合う様が見事すぎる。
同時に、傷つけ合う経験を伴わなければ本当の意味で相手に近づけない、なんてこともあるのかもしれない。コミュニケーション不全とはまた別の、関係性の不全と克服、いわばそんな不全自体をも越境する経験がなければ、本当に人を愛してるなんていえないよね、と言われている気がしてならなかった。ラストの展開は、悲観的だけど未来に対する広がりがある。

1960年代の話だけど、まさに日本は今こんな感じじゃなかろうか。
(課題はありつつ、一つの成功事例として扱われる)ドイツにおける移民との「共生」社会に鑑みると、日本において移民と多少なりとも共に歩み始めている感覚が持てるのは、60-70年かかるのかもしれない。そのときわたしは生きているんだろうか。

ドイツ作品に没頭する週末の良さたるや…