ベビーパウダー山崎

キング・オブ・マーヴィン・ガーデン -儚き夢の果て-のベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

4.5
なにもかもうまく行かなくて、考え得る限り最も悲劇的な結末をむかえたからといって退屈で陰鬱な日常はなにも変わりはしない。ラジオDJの小咄が一つ増えた程度。兄弟の物語と継母と娘の人生が交差する、四人が揃うと血が濃すぎる、淫靡でアンモラルな関係は脆くて危うい。三人の男女に男が一人入ることによってバランスが崩れる。ラジオブースと実家の往復しかない弟は内へ内へ、山師の兄はできるだけ遠くへ。その距離が近づいてしまったことにより先送りしてきた死が早まった。老いた継母は生も性も共にした義理の娘が女になったことを受け入れられない、私の人生を総取りされる恐怖からキチガイになってしまった。すべてが終わり、実家では幼いころの兄弟の楽しげな姿が映る八ミリフィルムが回っている。大抵の人にとって、思い出は勝手に美しく、人生は寂しく不幸だ。
ジャック・ニコルソンが物静かな弟役でこれが最高、二コルソンの抑えた演技はたまらなくグッと来る。嘘つきの兄はブルース・ダーン、このころの二コルソン映画の常連。継母のエレン・バースティンが自ら髪を切る、極まったメンヘラ芝居は抜群。娘役の女優はこのあとに焼死したらしい。
70年代ニューシネマの隠れた傑作。