horahuki

鮮血の女修道院/愛欲と情念の呪われた祭壇のhorahukiのレビュー・感想・評価

4.3
神も悪魔も死に絶える…

モクテズマ最高傑作!神と悪魔、善と悪、キリスト教と異教、生と死、知性と感性、人工と自然。それら二項対立を否定した先にあるアンビバレントをアンビバレントなままに突きつける。『エクソシスト』系統のオカルトホラーにローラン的な美少女吸血鬼をミックスした怪作!

子宮のような洞窟の中にある修道院って舞台がもう不穏なんだけど、シスターたちは血のしみた包帯を巻きつけたミイラのような格好をしていて超不気味!そんなヤバそうな修道院で拷問レイプみたいなエクソシズムでウッカリ人を殺したり、『キャリー』のクライマックスのような鬼の形相で、クソなキリスト教徒どもに破壊の限りを尽くすアルカルダちゃん(ジャケの子)が美しすぎてサイコー!!壁一面に所狭しと並ぶキリスト像、燃えさかるキリスト像、そして利己心の塊と化した聖女的なキリスト像とか、ビジュアル面もとにかく凄い!

フィルマで1975年製作になってるけれど、IMDbでは1977年製作のモクテズマ長編3作目。両親を亡くした少女ジュスティーヌが連れられてきた修道院で、周りから浮いた怪しげな美少女アルカルダと出会い仲良くなる。古城で遊んでいる時に棺を開いてしまった時からアルカルダの様子がおかしくなり、悪魔主導のもと2人は「血の誓い」を交わす…。

本作はアルカルダが母親(ティナロメロの一人二役)から生まれるシーンから始まる。父親は誰なのかは明かされず、「飼い葉桶での誕生」を連想させつつも悪魔像に取り囲まれた空間であることを考えると『ローズマリーの赤ちゃん』や『アサイラム・オブ・サタン』と同様な「悪魔の子」であることを印象付けている。

ポー原作の初監督作『ター博士の拷問地下牢』とは異なり、闇の中から浮かび上がるように現れる黒衣のアルカルダ、胸の上の切り傷、賛美歌に倒れるジュスティーヌ、背中の曲がった男から受け取るお守り、先祖代々の棺桶等々、レファニュ『カーミラ』のイメージをいくつも引用している。

その中でもジュスティーヌを心配するシスター・アンジェリカの主観映像としての後光と、その直後に登場するアルカルダの闇の対比、ジュスティーヌが倒れた際の顔を見合わす2人の顔力が『エクソシスト』でのパズズとメリンの対峙のような善と悪の対決を予感させつつも、悪側であるアルカルダは父(悪魔)と母(人間)双方の性質を持つが故に悪へと堕ちることの受容と拒絶で揺れ動き、善側であるシスター・アンジェリカは、他者を異教徒であることを理由として呪殺する。

ジュスティーヌを軸とした神と悪魔、善と悪に揺れ動く三角関係でありながら、何が善で悪なのかの軸を固定させず、それぞれの価値観に基づき利己的にのみ行動する人間の姿を追い続ける。理性側に位置していたはずの医師なんて、聴診器持ってるのにわざわざジュスティーヌちゃんのオッパイに顔を埋めて笑顔で心音聞くというセクハラ野郎だったし🤣しかもこれまたニッコニコで殺人までやらかすという…😱この医師役クラウディオブルックが悪魔役と二役を兼ねていることからも、善悪を固定化させない意図が読み取れる。

クライマックスも善と悪の対決に見せかけた、利己心同士のぶつかり合い・復讐者同士の生と死をも超越した醜い戦いでしかなく、そこに神も悪魔も存在せず、他者を想いながらも人の想いを身勝手に利用する博愛的かつ利己的というアンビバレントな「人間」だけだと説く素晴らしい帰結。めちゃくちゃ良かった👍👍VHS画質クソだったからBlu-rayで見たらもう少しスコア上がるかも?早くBlu-ray出して欲しい!!
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