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ザ・バニシング-消失-のYYamadaのレビュー・感想・評価

ザ・バニシング-消失-(1988年製作の映画)
3.7
【サスペンス映画のススメ】
〈ジャンル定義への当てはめ〉
 ○: 観客の緊張感を煽る
 ○: 超常現象なし

◆作品名:
ザ・バニシング -消失- (1988)
◆サスペンスの要素:
・失踪した若妻の捜索

〈本作の粗筋〉 eiga.comより抜粋
・オランダからフランスへ車で小旅行に出がけたレックスとサスキアだったが、立ち寄ったドライブインで、サスキアがこつ然と姿を消してしまう。
・レックスは必死に彼女を捜すが手がかりは得られず、3年の月日が流れる。それでもなお捜索を続けていたレックスのもとへ、犯人らしき人物からの手紙が何通も届き始める…。

〈見処〉
①S.キューブリック激賞のサイコホラー
 30年の時を経て、ついに解禁!
・『ザ・バニシング -消失-』は、1988年にオランダにて製作されたサイコ・サスペンス。
・監督のジョルジュ・シュルイツァーは、1993年にハリウッドにてジェフ・ブリッジス、キーファー・サザーランド、サンドラ・ブロック出演による『失踪 妄想は究極の凶器』としてセルフリメイクしている。
・本作は、恋人の失踪に取り憑かれ、精神を追い詰められていく男と、自分の異常性と正常性の立証のため犯罪に手を染める男の対峙を、過剰な演出を排し、鑑賞者に重い余韻を残す作品と仕上がっている。
・『シャイニング』の名匠スタンリー・キューブリックは、本作を3回観て「これまで観たすべての映画の中で最も恐ろしい映画だ」とシュルイツァー監督に伝えたとされる問題作ながら、日本では劇場未公開、ソフト販売も終了しており、長く鑑賞ハードルの高い作品であったが、2019年に日本の劇場にて公開。30年の時を経て「解禁」された。
 
②結び…本作の見処は?
「最も恐ろしい映画」と評したキューブリックの意図は理解出来る。
◎: 犯罪者とは「善悪の境界」ではなく「一線を越えるか否か」…。作中を通じた犯罪動機に正当性を持たせた展開により、鑑賞者はいつの間にか、その歪な考えに一定の理解を示すようになる。あたかも善良な市民と犯罪者は紙一重であるように描く、リアリティーの高いサイコサスペンス。
○: ラスト10分間に本作の衝撃は凝縮。
▲: 本来被害者であるオランダのカップル2人の綻びと弱さを描く中盤まで、作品テンポが遅く、途中離脱リスクが高い。
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