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キャビン イン ザ スカイのみおこしのレビュー・感想・評価

キャビン イン ザ スカイ(1943年製作の映画)
3.8
オール黒人キャストによる、ヴィンセント・ミネリ監督のミュージカル。極め付けは年号。公民権運動どころか、戦前に作られてると思うとかなり画期的な一本。本作だけで論文が書けちゃえそうなくらいの映画史において相当貴重なフィルム。

ギャンブル好きでお調子者のリトル・ジョーは、妻がいるにも関わらず金遣いは荒く、浮気もするというダメ男っぷり。それでもなおそんな彼を愛し続ける妻のペチュニアは、信仰心が強く清い心の持ち主。ある日、リトル・ジョーは賭け事のトラブルに巻き込まれ、瀕死の状態に。そこに天使と悪魔が迎えにやってきて...。

ちょっと見くびっていました...。モノクロだし、知名度もそんなに高くないし、豪華キャストというわけでもないのですが、ミュージカルシーンは圧巻だし、歌もゴスペル風でとてもソウルフル。この時代にこれだけのクオリティのミュージカルを、黒人のキャストだけで作り上げた監督やスタッフの苦労を思うと胸がいっぱいになります。
もともとブロードウェイのミュージカルだったとのこと、原作があるから映画化まで持って行けたんだと思いますが、公開当時のみならず、公開後も様々な論争を巻き起こしていくつかのシーンはカットされているんだとか。実際、DVD冒頭にも当時の差別的表現に関する注意書きが流れるほど。
直接的にはそれは分からなかったけれど、調べたら信仰心に厚い点とか、とにかくみんなが無理やり笑顔を作っていたりとか...そういう部分に「白人が求める黒人の理想像」みたいなものが見受けられるそうです。うーーーん、深い。映画って、観る人によって本当に色んな視点があるんだなと痛感。

でも、黒人の方独特のあのリズム感とジャジーな曲調は、当時の他のMGMミュージカルでは絶対見受けられない雰囲気と世界観。バーでのダンスシーンは特に見応えたっぷりでした。『ウエスト・サイド物語』のマンボのシーンにちょっと通ずるものがある、あの踊りたくなっちゃう感じ!!最高でした。ヴィンセント・ミネリ監督のミュージカルの巨匠としての手腕も光るカメラワーク。
ストーリーも確かに美化されてる部分もあるかもしれないけど、天国と地獄どちらに行くか?善行とは何か?っていうのは万国共通のお題だと思うので、明日から自分の生き方を見つめ直そうと考えさせられました(笑)。最後のシーンはジーンとしたなぁ...。素敵な夫婦愛がテーマの作品。

キャストのうちの3人が『風と共に去りぬ』に出てる方でした。さらにはレナ・ホーン、デューク・エリントンも出演していて当時の黒人のスターが大集結、という感じ。シビれた〜!!
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