【語りの寓意性】
スウェーデンとドイツで一本ずつ撮った後、一度見切りをつけた母国デンマークの興行主の「最もデンマークらしい映画を撮ってくれ」という依頼により再びメガホンをとった作品。
原作は当時デンマークで大人気だったおとぎ話の演劇。
高慢な王女に求婚するもあえなく断られてしまったデンマークの王子が魔法のやかんで王女をおしとやかな女性に再教育する話。
王宮の絢爛なセットや衣装、デンマークの森の質素で慎ましい風景と一度に二度楽しめるのが素晴らしい。
あまりドライヤーぽくはないが、とても出来の良い作品。ところどころフィルムが失われているのが非常に惜しい。
デンマークの伝統や美しさを讃える目的で作られているため、価値観的には非常に古い。男性への従属を女性の美徳としているところが、他のドライヤー作品と一番かけ離れている点か。
映像としては非常に好みの作品だったけとど、話としては王女があまりにも可哀想という感想しか出ない。男どもがクソで王女が可哀想に見えるのは何ならドライヤーの狙いだったんじゃとすら思える。
もっともデンマークらしい映画が、最もドライヤーらしくない映画なのは何とも皮肉。