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ウォーク・ハード ロックへの階段のchunkymonkeyのレビュー・感想・評価

3.5
「ウォーク・ザ・ライン」から着想を得たいわゆる古典的音楽伝記映画をパロディ化したギャグ映画。現在に至るまで大量生産されている音楽伝記映画が好きな人も嫌いな人もきっと楽しめるし、意外に感動する!?...ことはないか(笑)。

単にお決まりの音楽伝記映画の展開をおふざけジョークにしているだけでなく、エルヴィス・プレスリー、ビートルズ、ビーチ・ボーイズ、エアロスミス、フォー・シーズンズなど多彩な音楽ネタが仕込まれていて、映画ファンだけじゃなく音楽ファンにも堪らない仕上がりになっています!

今、再び鑑賞するからこそ注目したいのは、本作が2007年のソニー/コロンビア製作作品であること。今から15年前に既にこのパターン化した音楽伝記映画の方が"嘲笑"の対象であることをソニーが自覚しているにも関わらず、その後も同様の音楽伝記映画が大量生産されており、そして2022年にはソニー自身が先日ホイットニー・ヒューストンの伝記映画を公開したわけです。

これぞまさに「ボヘミアン・ラプソディ」という呪縛よね。この古典的パターンにかっちり沿っただけの教科書的作品が大ヒットしたもんだから、「こんなお手軽でオイシイ話はない」ってことで、そりゃあどこのスタジオも追随しようとなります。さらに、同作は必ずしも批評的には絶賛されたわけではないので、さらにそこに賞を欲張ってR指定+ミュージカル仕立てで凝った作りにしたのが「ロケット・マン」。ところがそれがそこまでヒットしなかったため、その後の作品たちはますますこの古典的ボヘラプ構文に固執することに...

そんな文脈の中、ついに監督の個性が爆発し新鮮味あふれる「エルヴィス」が興行的にも本年大ヒット。今年の賞レースでも想定外に善戦しており批評家を驚かせていますが、こういった音楽伝記映画の流れを踏まえるとある意味評価は当然の結果かもしれません。

話を本作に戻して、脚本にはジャド・アパトーが入り、まぁお気楽なおふざけコメディ。ポール・ラッドにジョン・レノンさせようってどんな発想よ🤣チョイ役のチョイ役まで当時TVドラマなどで人気絶頂のコメディ俳優をずらりと揃えているのも注目しちゃう。ゴリゴリのB級作品なのになぜか歌唱は妙に本格的で、音響処理も無駄にきれいなのはやっぱりソニーだから?そして、あの洗面台への異様な執着は何なん...

本作のような大物俳優は出ずゆる~くギャグをかましながらもB級にしては妙な質感の良さがあるジャド・アパトー系のおふざけコメディは、コロナ後における劇場でヒットする娯楽映像大作でも豪華俳優勢ぞろい作品でもなければ、ネトフリが莫大な予算で自由に作らせる本格賞狙いドラマ作品でもなし、そうはいってもその他各種配信系が低予算で量産するどーでも作品ほどのテキトウな作風でもないため、ホントどこにも居場所がなく最も絶滅の危機にある映画ジャンルなんです...

そんなこんなで本作、今だからいろいろ考えて見直したい作品でした!
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