猫脳髄

エンティティー/霊体の猫脳髄のレビュー・感想・評価

エンティティー/霊体(1982年製作の映画)
3.9
マーティン・スコセッシ「映画史上最も怖いホラー映画11本」(2009)

正体不明の「霊体」の姿を可能な限り映し出さず、かつ可視化する場合も無機質で抽象的な姿を取らせるという演出や、怪異が出現する際の前触れがないもしくはごくわずかで、突然ショックシーンがおっぱじまり、音楽も少し遅れて追いかけ、観客の混乱を誘発する仕掛けがユニークな作品。脚本も演出もなかなか優れている。

シングルマザー(ホラーに限らず、今でも「主人公=被害者」の典型例だが、いずれ系譜をたどってみたい)のバーバラ・ハーシーは、自宅で突然見えない存在にレイプされ衝撃を受ける。外でも襲撃され、危うく命を落としかけたハーシーは精神科医に相談するが、当然ながら病気を疑われてしまう。事態を目撃した親友のすすめもあり、超心理学者たちに助力を乞うという筋書き。

エンディングで実話ベースであることが明かされるが、それは措く。名優ハーシーが生活ヤツれしながらも子どもたちに慕われ、怪異に立ち向かう逞しい母親を演じており、さらに「シングルマザーの性」と言うあまり立ち入れないテーマを正面から撮った点もよい。実際のところ、本作に登場する(霊体を含む)男性はハーシーを利用するか、すぐに逃げ出してしまう手合いばかりである。真に彼女に手を差し伸べるのは、親友や超心理学の教授など女性ばかりである。

また、大掛かりな心霊実験を取り上げた作品としても見逃せない。同じ大学内での精神医学と超心理学の対立で、前者が後者を妨害するという要素も絡んで盛り上がる。
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