検非違使

マニラ・光る爪の検非違使のレビュー・感想・評価

マニラ・光る爪(1975年製作の映画)
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「死ぬまでに観たい映画1001本」945+212本目

1975年のマニラを体感できる。
中国人の華僑の親父が悪者。

田舎で漁師をしていた青年フリオは、周施屋に騙されマニラに連れられた恋人リガヤの後を追った。日雇いをしながら、手紙の住所を頼りに辿った彼女の居所を探る日々。労働条件は過酷で“タイワン”と呼ばれる会計係の給料のピンハネが常態となっている。それでも文句を言えばクビ、黙って働く他ない。しかし、飯場の仲間たちはみな優しかった。かつては地主の息子だったアトンのバラック住まいを訪ね、その妹ペルラの品のいい応待に感心したフリオ。だが、彼女もやがて兄を失い、娼婦に身を落とすであろう。フリオは時折つき上げる暴力の衝動に悩まされた。予告なしの解雇。男娼は夜の公園で一人ぽつねんと座る彼にクラブで働くよう勧誘する。だが、一晩でそこを逃げ出した彼は、マニラに出て来た当初、親切にしてくれたポルに仕事の斡旋を頼む。そんなある日曜。フリオはミサで偶然にもリガヤと再会。映画館(ニコラス・レイの「キング・オブ・キングス」を上映中だ)に入って話を聞く。そして、ホテルへ……。彼女の話は辛酸を極めた。今の売春宿の持ち主ア・テックが彼女を好きになって、他の女たちよりは厚遇されているが、彼のオモチャだと言う。フリオは駆け落ちを提案したが、約束の時間に彼女は現れなかった。やがて、売春宿の前でア・テックを待ち伏せしたフリオは彼を追いつめてアイスピックで刺し殺す。そして、野次馬たちはそんな彼を取り囲み非難する。恐怖に歪む彼の顔が白く溶明し、リガヤが夕陽に包まれ髪を梳く美しい姿をスローモーションで捉え、映画は終わる。
 以上、非常に既視感のある物語ながら、若くして亡くなったフィリピンの名匠ブロッカの直截で力強い語り口に唸らされる硬派な青春メロドラマ。待ち呆けを喰うフリオに、ポロがリガヤの来られない本当の理由を告げるまでの演出が特に秀れる。
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