maki

プレイタイムのmakiのレビュー・感想・評価

プレイタイム(1967年製作の映画)
3.7
鉄・ガラス・コンクリートできた建築と都市、往来する大量の車、街ゆく人の服装もグレイッシュで似通った色味に溢れ、極端に整然とした反復で構成される架空のパリへとやってきたユロ氏。
中心性や象徴性を排除した近代建築の特徴と、ガラスだからこそ、あちらもこちらも見えるたくさんの情報量が画面いっぱいに描かれることにワクワク感を感じつつ、ユロ氏の踊らされているような振る舞いに皮肉が込められていて面白い。
忙しなく狂騒的な街は、最早、その場所固有のキャラクターを失いつつある中、旅行で訪れたアメリカ人が一様に花を頭につけ、街角の花屋にフランスらしさを感じるくだりは面白かった。

イチから作られた映画のセットとしての都市は、近代の特徴を捉えつつも、全く合理性のない空間構成で、そう言う意図したのかどうかよくわからない矛盾は、どこか捉えどころのなさとして興味深い。

*****
『バービー』のマテル社で逃げ回るシーンや、ウェス・アンダーソンの『アステロイド・シティ』を観ていて、ふと本作へ。いつか観ようと思っていたら、ようやくその日になりました。
こうやってみると、ジャック・タチが作り込んだこの世界は徹底的に人間に冷たくみえる。だからこそ、『バービー』で引用されたように見えたのかな。
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