土屋ノリオ

ストリート・オーケストラの土屋ノリオのレビュー・感想・評価

ストリート・オーケストラ(2015年製作の映画)
3.5
実話ベースのいわゆる感動ものと思い鑑賞したが、イメージとは大きくかけ離れていて、原題『The Violin Teacher』の方が、まだしっくりくる。監督はカンヌ国際映画祭をはじめ世界的に実力を認められている「セルジオ・マシャード」。主人公のラエルチを演じるのは、ブラジルで彼を知らない人はいないほどの国民的スター「ラザロ・ハーモス」。子どもたちは、700人以上のオーディションから選出。モーツアルト・パガニーニ・ブラームス・チャイコフスキーといった耳にしたことがあるクラシックの名曲が演奏され、クラシックとヒップホップを分け隔てなく同等に描かれている。モーツァルトのような才能を持っている人間はスラム街にも存在し、音楽は人生を変えられるとしているが、犬の遠吠え、サイレン音と不気味な映像が不安を煽られ、ブラジルの光と影が伝わってくる。偽造カードの下りのラストも、友人の死で暴動があっても、暮らしの現実は変わらないと解釈でき、オリンピックの華やかさの裏側にある、ブラジルの現実に寒気がしてしまう作品。
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