櫻イミト

ロンドンの暗い眼の櫻イミトのレビュー・感想・評価

ロンドンの暗い眼(1939年製作の映画)
3.5
「魔人ドラキュラ」(1931)のベラ・ルゴシがマッド・ドクターを演じたイギリス製ホラー。原作は同国の人気スリラー作家エドガー・ウォーレスの同名小説(1924)。イギリスで初めて15歳以下入場不可とされた一本。

ロンドンでは生命保険加入者の不審な溺死が相次いでいた。怪しいと睨んだホルト警部は保険業をオーロフ(ベラ・ルゴシ)を訪ねる。オーロフは医師の資格を持ち慈善事業として目の不自由な人々の福祉施設を運営していたが。。。

シナリオ映像ともにイギリス映画らしい論理的な作りに素顔のベラ・ルゴシによる名演がマッチして意外に楽しめた。冷酷な殺害方法とジャケット画のメインを飾る盲目の大男ジェイク(ウィルフレッド・ウォルター)の怪物的なルックスはかなりのインパクト。終盤には予想もしなかった展開があり引き込まれた。

福祉施設を隠れ蓑にし障碍者に殺人をさせる卑怯な悪事は、映画史上でも先駆的なのではないか。ハマープロ設立以前の英国ホラーであり、サマーズ監督が無名なことも手伝って日本では殆ど知られていないが、西欧のホラーファンの間ではベラ・ルゴシの名演作として知られているようだ。

ユーロ・トラッシュホラーの雄であるジェス・フランコ監督の出世作「美女の皮をはがす男」(1962)は、設定&プロットともに本作から大きな影響を受けている。

※1960年代ドイツでエドガー・ウォーレス原作のクリミ映画が大流行した際、その一本として本作のリメイク「The Dark Eyes of London」(1961)がクラウス・キンスキー主演で制作された。※Filmarksには登録なし
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