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シティ・オブ・マッドのLudovicoMedのレビュー・感想・評価

シティ・オブ・マッド(2008年製作の映画)
2.0
もう一つの『バス174』。

本作、狂った街、シティオブマッドは、ファベーラこそ舞台となり、史実として描かれているものの、シティオブゴッドとは、関連性の薄い作品。

メイレレスが全世界に見せつけた、神の街ファベーラの地獄の様なスラムの実態に、世界中が驚愕した。 日本では、それに乗っかり、セガールの沈黙の〜方式で、『シティオブ〜』のパチモン邦題で興味を吸いよせた。
しかし、本作で描かれる史実は、2000年、リオで起きたバスジャック事件の主犯者『サンドロドナシメント』という人物に焦点が当てられている。
同事件を、強烈なストリートの描写でえぐったバス174というドキュメンタリー映画がある。それと比べるとサンドロが2人の人物に分けられてたり、母親の脚色エピソードがあったり、映画用にアレンジがほどこされた作品となっている。

どちらかというと、シティオブゴッドファンは、バス174の方が尖っててオススメです。

そんな2作品のパチモン感漂う本作は、2作品の強烈な要素を抽出しブレンドしたような魅力がある。

名無しの主人公(あだ名サンドロ)は、シティオブゴッドの様な、過酷なストリートで幼少期を過ごし、ドラッグと殺しでティーン期をサバイバルしていく。
ストリート独自の秩序や脅しでしか、金を得られない実態は、リトルゼ達の時代から、何一つ変わっていない。

加えて、終盤はニュース映像を交えたドキュメント風に映像転換されていく。
かぎりなく、ブラジルの『今』を捉えた意欲作に間違いないが。

脚本が弱い。
残念な事に、本作は多方面からの群像劇という強い味方がありながら、まるで気持ちのこもってないキャラの弱さが、ご都合主義に見える。

主人公しかり、ストリートでの生存本能が抜けきらず、夢にまでみた安定の暮らしを掴めてもギラついた態度が邪魔をする。

生涯ストリート暮らしというハンデがあったにせよ、ライフスタイルを考え直す必要があったと思う。
となると早い話、主人公に共感ができず、バスジャックの動機も弱く感じる。

しかしブラジルの深い闇を見つめ直す、という意味でもこういった、ブラジルギャング物は、まだまだチェックしておきたい。そう思わせる一本でした。
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