爆裂BOX

恐怖の火あぶりの爆裂BOXのレビュー・感想・評価

恐怖の火あぶり(1979年製作の映画)
3.2
幼い頃に母親からの虐待で火炙りにあったドニーは、そのトラウマから全裸の女性を焼き殺すという凶行に手を染め、狂気の世界に囚われていく…というストーリー。
「血の出ないスプラッター映画」としてイギリスでは発禁処分になったと言えるカルトサスペンスホラーです。
幼い頃に母親からイタズラの罰としてコンロで腕をあぶられるという折檻を受けた男ドニー。焼却場で働く彼が同僚が事故で火達磨になった姿を見てトラウマを刺激され、更にその後母親が急死しているのを発見してタガが外れたのか次々女性を家に連れ込んでは全裸にしてガソリンかけて火炎放射器で焼き殺していきます。
ドニーが目の前で炎に包まれた同僚を見ても身動きできず、更に家に帰って母親の死を知ってショックを受けるも、「自由になった!」と大音量で音楽かけたりするも、やがて幻聴が聞こえてその声の命ずるままに凶行に手を染めていくまでが結構丹念に描かれます。一室を耐火使用にしたり、火炎放射器や防火スーツ購入したり着々と準備を進めていく姿や、d¥最初の犠牲者の花屋の店員さんを言葉巧みに、そして半ば強引に家に連れ込んでいく所も割合しっかり描かれていますね。
肝心の火炙りシーンは流石に今見ると合成感丸わかりですし、血の出ないスプラッターと評されるほどのインパクトやゴア感はないですが、燃えながら悲鳴を上げていた犠牲者がやがて物言わぬ焼死体と化していく演出は陰惨さが感じられて良かったですね。二人目以降は声かける→黒焦げの焼死体のカットと火炙りのシーンが省略されるのは残念。予算の関係か。
ドニーが自分の異常性を自覚し、何とか社会に適応できるように変わろうと神父に助けを求めたり、職場の同僚の友人に相談したりする所はちょっと新鮮でした。3人も殺しおいて何をいまさらという感じもありますが。
友人と共に女の子とディスコに繰り出すも、トラウマを刺激されて御破算になってしまう展開は分かっていても切ないですね。そこからやっぱり無理だったんだと開き直った感じで道で拾った女性二人を言葉巧みに家に連れ込んでいく後半も中々ハラハラさせられました。
常に気にかけてくれる友人や役に立たなかったけど助けようとしてくれた神父もいたのになぁ…とやりきれない感じはありますね。
ラストはまんま「マニアック」ですが、こちらの方が早いんですね。本作を参考にしたのかな?
オチも新たな殺人者の誕生を予感させて不気味でした。
劇中とエンドロールで流れる音楽がかなり良かったですね。
スプラッター的な見せ場はないですが、トラウマから殺人鬼になっていく男の姿が丁寧に描かれていて見応えはありました。