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魚が出てきた日のRのレビュー・感想・評価

魚が出てきた日(1967年製作の映画)
4.4
ずいぶん前に友人に勧められて、妙な響きのタイトルだなぁと興味はあったのだが、ずるずる見てなくて今日に至りました。何ともユニークで、風刺のききまくった、辛辣な映画だった。まずオープニングが洒落てる。いきなりフラメンコを踊るスペインの三人娘が出てきて、スペインの次に核爆弾が落ちるのはどこかしら〜♪ スペインではなさそうね〜♪ と、歌って踊ってフィニッシュ!と同時に弦楽器ベースの不気味で前衛的なめちゃめちゃクールな音楽が流れ始め、ネオンサインの如き魚たちの絵が真っ黒な画面を行き交う。ワクワク。で、次に核爆弾が落ちるのが、ギリシャのカロス島なのです。実在する島なのでしょうか? カロス島上空で英国軍用機のエンジンが停止、墜落する前に、核ミサイルを2つ、中身不明の謎の金属ボックスをひとつ、落下傘をつけてカロス島に投下。3つは無事着地するが、飛行機は海に墜落。大変な騒ぎになるのを防ぐべく、軍当局は核爆弾と謎のボックス回収のため、観光地デベロッパーのフリをしてカロス島に赴く。その頃、島に泳ぎ着いた二人の操縦士は、ブリーフ一丁で、島民に気づかれないように、軍に連絡を取ろうと四苦八苦。二人でじゃれ合い、イチャイチャ身を寄せ合って休憩したりしながら悪戦苦闘。そうこうしてたらデベロッパー隊に扮した軍人さんたちが到着。兵隊さん達、みんなド派手でサケイデリックな洋服に身を包み、誰がどう見てもゲイボーイズ。すごーい、おもしろい島だねー、岩の上でセックスできるねー、とか話してる二人組みを、兵器回収部隊と気づかず、パンイチの二人が身を隠しながら、あのゲイどもめ!と罵る🤣 めちゃオモロイ! そう、この映画、シリアスそうな内容なのに、ふつーにドタバタコメディーなんす。結構ふつうに笑えるシーン多い🤣🤣🤣 そういうの期待してなかったんでビックリした! で、デベロッパーが島の視察をしてるってことが大々的にニュースになり、新聞で騒がれ、新たなリゾート地になるぞ!と勘違いした島民たちは、地味な村をカラフルに塗り替える。話題の島だ!という噂が本土でも広まり、ほんまに観光客でごった返し始める。また、視察団が岩場でギリシャ彫刻を発見したことで、世界から考古学者たちも詰めかける。大繁盛で大歓喜の村人たち。しかし、視察団は、肝心の金属ボックスをどれだけ探しても見つけることができない……というお話で、問題は謎の金属ボックスのなかにいったい何が入ってるのか、ということ。これがお楽しみのひとつ。この非常に重い金属ボックス、実は羊飼いの夫婦が見つけており、こんなに重いんだ、金でも入ってるに違いない、と自宅のボロ屋にひいこら持って帰り、さまざまな方法で開けようと試みている。さて、この人たち、これから一体どうなっていくのでしょうか。途中、観光客が押しかけてきて、大賑わいが始まって、流れ始めるクラブの音楽に合わせて、大勢の人がノリノリで踊り始めるんやけど、みんながクールにビシ!バシ!とコレオグラフィーキメてくるの、めちゃくちゃシュール! 女の人たちみんなショーガールみたいな格好してるし! 狂喜乱舞! 見てるこっちが踊り出したくなる! あと、着飾った兵隊の皆さん含め、だいたいの男子が途中から半裸なので、半裸男子が好きな人も存分に楽しめるでしょう。個人的にオモロかったのが歯医者さんのドリル! 昔ってほんまにあんな不衛生な使い方してたんかな? いまは絶対ないやろーけど、そうだったらめちゃくちゃ嫌やな! で、もちろん、ネタバレはしないようにお話ししますが、終盤は、控えめに言って、かなり衝撃的。ようやく本作のタイトルの意味が分かる瞬間。ものすごいシュールさやなー、と思ったけど、よくよく考えたら、いままさにこの世界で起こっていることと何も変わらないではないか! 1967年から人類の精神的レベルはまったく向上していない。それどころか、自分たちを騙し、誤魔化し、目を背ける能力がより高くなっていってる。言葉ばかり巧みになって、平生から何もかもインチキ状態。それやったら何も考えず、野生的に踊り狂ってた方がまだマシかもしれない。我々の世界はもはやターニングポイントに来ている。ポイントオブノーリターンを超えていっている可能性もある。そういういまだからこそ、ドントルックアップみたいな映画も出てきたりしてる。それと同じ系譜にあり、もう笑うしかねーじゃんははははははと思ってたら、え……!突如凍りつくようなエンディング。いやーこんな面白いエンターテインメント映画があったんすね! 見始めたら止まらない! すごく面白かったです!
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