ゆべし

暴力の街のゆべしのレビュー・感想・評価

暴力の街(1950年製作の映画)
2.5
ジェセフロージーがハリウッドで監督した5本のうち、2作目。黒人差別と人種分離が当たり前だった1950年の製作で、田舎街の「白人とヒスパニック」の軋轢を描くとはロージー監督の先見性が凄い。アメリカ史的には60年代にやっと黒人の人権運動が盛り上がり、更にマイノリティなヒスパニックやアジア系はハリウッドからマトモに扱われる事はその後もずっと無かったのに。ジョセフロージーの差別主義に対しての思想が強く反映された映画。
この映画における差別の原因は主に分断を煽って商業センセーショナリズムに走るマスメディアなのも面白い。田舎街の住人は実は素直で素朴な人々で、マスコミと一部の差別的人間が煽るにつれて全体が暴徒化していく様がサスペンスとして描かれる。
登場人物にステレオタイプな白人至上主義者はおらず、差別的な白人の若者の父親が実はマイノリティに同情的で息子を批判したり、白人警察官の中にも平等な善人キャラがちゃんと居る。
1950年のハリウッド映画で、これほど人権意識が高いドラマがあるとは本当恐れ入りました。そしてこんなに崇高で才能豊かなロージー監督を追放したハリウッド赤狩りは本当に罪深い。その後ヨーロッパで素晴らしい映画を撮るから、映画史の結果としてはそれはそれで面白いけど。
ゆべし

ゆべし