まぐろさばお

過去を逃れてのまぐろさばおのレビュー・感想・評価

過去を逃れて(1947年製作の映画)
4.0
フィルムノワールと言われる一群のきっかけ的な作品。犯罪映画でありサスペンスであり嘘に嘘を塗り重ねて複層化させる脚本の妙味がすでにみられる。一年前のロバート・シオドマク監督の「殺人者」はこれよりもさらに複雑で渋みがすごかったが、こちらはその渋さの低音部にメロドラマが忍び込ませてあるため、犯罪の緊張感と生死をかけた恋愛が伴奏し、渋さと悲恋が程よいくらいの美しいハーモニーを奏でている。
この辺は42年のマイケル・カーティスの「カサブランカ」as time goes by 時が流れても、のモチーフの影響が色濃く感じられる。出会う時は必ず月夜、お互いに秘密を持ったままの出会いであり、男はその過去のことを復讐心の入り混じった恋心としてずっと抱えている。
「殺人者」でもエヴァ・ガードナーが急に歌うシーンから入ったりする。