爆裂BOX

エイリアン パンデミックの爆裂BOXのレビュー・感想・評価

エイリアン パンデミック(2005年製作の映画)
3.7
経営難のダンの酪農場で、品種改良の為遺伝子操作を施された牛から、臓器が巨大化した形成異常の子牛が生まれる。さらに、子牛の体内には想像を絶する悍ましい姿をした6匹の幼体がおり…というストーリー。
「エイリアン・プラネット」や「シンティラ・プロジェクト」のビリー・オブライエン監督のデビュー作であるモンスターホラーです。
経営難の牧場で遺伝子操作を施された牛から生まれた怪物が牧場内の人間を襲い始めるという展開ですが、タイトルにエイリアンとついていますが、上記の様に遺伝子操作によって怪物化した牛なのでエイリアンではないですね。
全編ジメジメとした陰鬱な空気に包まれた作品で、登場人物もほぼ5人だけで、舞台も牧場内だけと低予算感漂いますが、不思議と最後まで飽きずに見れるのは監督の演出力の賜物か。怪物の姿も中々ハッキリ映さないんですが、厩舎の水溜りの中で気泡が浮かんで何かがいる事示したり、泥水の中にいると思われる怪物を追い出そうとトラクターで突っ込んだら途中でエンストして腰までつかる泥水の中を進んでいかなければならないなど、怪物を極力見せずにハラハラさせるシュチエーションの作り方が上手いですね。冒頭の牛の出産シーンも、ロープつけて滑車で引き摺り出したり、呼吸してない子牛の足掴んでブンブン振り回すシーンが妙に印象に残ります。
怪物は最初かき揚げみたいな姿ですが、ヌメヌメしたエビみたいな姿で這いずり回る所は気持ち悪いですね。子牛の体で蠢く所はちょっと「エイリアン」のチェストバスター彷彿しました。邦題はそこからかな?中型犬くらいに大きくなった個体もグチョドロした造形がかなり気持ち悪さ感じさせていいですが、あまりはっきり画面に映らないのは残念。造形担当したのは「ヘルレイザー」のボブ・キーンだったんですね。小さい奴は結構簡単に叩き潰さられるし、大きい奴も割とアッサリやられましたね。繁殖力は脅威かもしれないけど、結構簡単に制圧できそうな気も…
この実験を行った博士のジョンが、寄生虫が外部に出るのを防ぐ為とはいえ躊躇なく人の頭にボルト銃撃ちこんだりとかなりヤバイやつでした。終盤ではこのキャラによってサイコ・スリラーっぽい雰囲気も漂いましたね。
主人公ダンは金目当てに実験に協力したせいで惨劇の一因を担いましたが、基本的には善人で、父親から受け継いで守ってきた牧場めちゃめちゃになるし可哀想ではありましたね。終盤の戦いではあまり役に立たなかったけど。駆け落ち中のカップルジェイミーとメアリーは、偶々牧場の前の道で車中泊してて親切心からダンに協力してばっかりにとばっちり喰らって一番可哀想でした。メアリーの終盤の奮闘具合は凄かったな。ダンを決して見捨てない優しさも良かった。
登場人物の関係性などを詳しく説明せず、会話等から察せられる演出も良かったですね。
ラストの不穏な感じも良かったです。直後のエンドロールで明るい音楽流れるギャップにはちょっと戸惑ったけど。
このタイトルとジャケからはC級地雷作品の雰囲気漂いますが、全編覆う陰鬱な雰囲気や演出など最後まで引き込まれる掘り出し物作品ですね。