みゆう

BUNGO ささやかな欲望のみゆうのネタバレレビュー・内容・結末

BUNGO ささやかな欲望(2012年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

明治・大正時代の文豪たちの作品を元に映像化した映画。まさに文学って感じの映画。

「見つめられる淑女たち」の方は、概ね官能的って感じ。最初の注文の多い料理店はそうじゃないけど。注文の多い料理店は、見つめられる淑女のルールでもあったのか、もともと女性が出てこない作品に、無理矢理、男女の関係性を持ち込んだ感じ。石原さとみはともかく、宮迫が出てきて一気にコント感。注文の多い料理店好きなんだけど、これは特に面白くなかった。ラスト、本当ははぐれた犬が助けに来て山猫を追い払うのに、これはそういうのなかった。原作通りだけど、男女のもつれを持ち込んで来てあまり面白くない。注文の多い料理店あんま関係ない。山猫に犬食べられちゃうし。結局どうやってあの山猫軒から逃げ出せたのかな?不倫の慰謝料についての攻防戦も、ちょっともういいかなって感じだった。

「乳房」は、なんかその時代の文学作品感満載って感じ。全然違うけど、梶井基次郎の「檸檬」を思わせる。思春期の少年の抑圧された性的衝動を乳房の形で具現化。床屋の奥さんが良い人だけど女だなって感じでエロかった。最後、少年も学徒動員で旅立つってなった時に、奥さんが情を持った人はみんな戦争に持っていかれるんだというのが、なんか切なさも感じられる。

「人妻」は、本当に官能的。主人公の妄想の中の奥さんの演技が本当に官能的だった。頭の中のもう一人の自分との対話とかは文字だといいけど、映像だとちょっと違和感感じたかなぁ。ラストは特に何もなく主人公が独りごちるのは文学作品的。

告白する紳士たちの方は、結構良かった。「鮨」と「幸せの彼方」が良かった。鮨は、橋本愛演じるトモちゃんの、ずっと年上の先生と呼ばれる男性に対する淡い恋心の描写が良かった。リリー・フランキーと橋本愛の演技が素晴らしく、淡々とした話だけど見応えある。ラストで奥さんを愛していたのかという問いに、トモちゃんが自分に恋心を抱いていることをはっきりと確信して、答えをはぐらかしたまま引っ越して姿を見せなくなり、その態度からやんわり線引きされたということを悟るトモちゃん。二人の演技が自然でよかった。

「握った手」は、ラストの眼鏡をかけていたかどうかを答えないまま終わる感じが好き。これは結構元が文学作品だなって感じの話。駆け出しの黒木華がかわいかった。ケダモノの手は、山田孝之の幻覚、それを成海璃子の話しで解かせてもらった。黒木華に対しての恋慕を成海璃子へ昇華する感じとか、文学作品だよな。

「幸せの彼方」は、ちょっと元気になれる。波瑠の泣きの演技が良かった。夫が子供を里親に預けている事実を自分の生い立ちに重ねて、会いに行く電車の中のシーンが好き。たまたま見かけた風琴の物売り家族を見て、それを後で真似するシーンは幸せを感じる。お見合いで出会った二人だけど、ああいう関係の夫婦になれてよかったね。そこまでの夫婦になろうと二人で静かに誓い合う感じが幸せそうだった。

どれも盛り上がるところがあるわけではなく、本当に昔の文学作品をそのまま映像化したような感じだから、淡々としてるけど、原作を読みたくなってくるかも。
みゆう

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