高田ティガ

よだかのほしの高田ティガのレビュー・感想・評価

よだかのほし(2012年製作の映画)
4.0
2011年震災以降。
故郷(ふるさと)という言葉が、これほど意味を持ち始めた時代はないだろう。


ところどころギコチナイが、それを置いても良い映画だと思う。

DVDの菊池亜希子のインタヴュー集も、この作品の理解の助けになる。(特にあのお祭りが、実際のお祭りの日に撮影されたという点は面白いと思う。)

『よだかの星』より
「真っ赤に燃え尽きて、ぼくは死んでも構わない」
とぼんやり思っている主人公に、会社の女の子の言葉が刺さる。
「とわさんは、どーして生きてるんですかー?」


こけしとマトリョーシカを並べて、
「なんだか初めて会った気がしない」
とアフレコを入れてる場面など、随所随所で、「いいセンスしてんな……笑」と思いました。笑


カメラのレンズを通して、現実と自分の間にワンクッション置いて、現実と間接的にギコチナク接することしか出来なかった主人公が、神話的雰囲気に助けられて、現実と溶け始め和解してゆく。

「竜笛」という父との接点、すなわち花巻との接点における傷を、塗装会社の同僚の男の子に電話して、修復のアドバイスをもらうシーンなんて、結構良かったんじゃない?

菊池亜希子もインタヴューで述べていたように、この映画が提示するのは「これが人生のターニングポイントだ!」みたいなはっきりしたものではないのだけれど、28歳、これから30代に差しかかろうという人間を暖かい目で描いていると思う。

そういう意味で、撮影当時、主人公と同年齢28歳だった菊池亜希子が「これは私の映画」とコメントしたのは、何となくうなずける。