MasaichiYaguchi

イラン式料理本のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

イラン式料理本(2010年製作の映画)
3.6
本作の監督の周りの人々、母、妹、妻、義母、伯母、母の友人、友達の母親と、7つの家庭の主に台所を舞台にしてイラン家庭料理が作られていく過程をドキュメントした作品である。
この映画で初めてイラン家庭料理を見たが、ピラフ、肉団子、ナスの煮込みという、我々がよく知っている料理でも、「所変われば、品変わる」ではないが、作り方も出来上がりも全く違う。
登場した料理は家庭料理とはいえ、撮影しているので「特別料理」ではないかと思う。
ラマダン明けの豪華料理の品々やそのボリューム、そして大勢で食べる為に用意された皿の多さに圧倒される。
このラマダン明けのものを含め登場する料理は、手間を掛け、何時間も費やして作られていく。
本作ではベテラン主婦と若い主婦との対比も描かれる。
ベテラン主婦は長年の経験や感に基づいた匙加減で、手際良く調理していく。
作る料理が違うので単純には比較出来ないが、若い主婦は手際が悪く、ベテラン主婦の倍の時間を費やして作っているように感じられる。
そして若い世代は、急な来客対応には缶詰めを利用したりして合理的だ。
本作を観て、イランは未だ男性上位社会だと思う。
「家事」は妻の仕事、亭主は外で働いて「家計」を支えるという構図が見えてくる。
作品に登場する年配のお父さん達の発言を聞いていると、豊富な人生経験から来る「家族円満の秘訣」がポンポン出て来て、苦笑いしながらも何度も頷いてしまった。
イラン式料理は、我々が日常的に見るものとは違うが、その湯気の向こうにある家族の風景や人情の機微は、国は違っても変わらないと思う。