ルサチマ

御冗談でショのルサチマのレビュー・感想・評価

御冗談でショ(1932年製作の映画)
4.7
『ゴドーを待ちながら』よろしくくどいほど帽子のギャグが繰り返されるのはマルクス・ブラザーズの醍醐味だが、そうした演劇的素養とは別に生き物たちの登場のさせ方もまた中々に奇妙。鳥については『ルームサービス』でも美術装置として部屋をしっちゃかめっちゃかにさせる要素で出ていたが、アザラシについてはまさかの本物を劇中に放り込んでみるなど、ロジエのウナギパニックを遥かに先取りしたドキュメント的な生々しい笑いにまで貪欲に取り入れてくる。
まともじゃないグルーチョ演じる学園長が息子に悪態をつきまくり、堂々と敵のアメフトチームの人間の誘拐を試みたり、勧誘したハーポにアメフトのグラウンドにバナナの皮をあちこち放り投げて味方のチコまでをも転覆させるイカれっぷりな不正の連鎖に呆れるが、ゼッポ演じるダメ息子も全く贔屓する気がなくなる堂々たる無能さでこれぞマルクス・ブラザーズの脅威的に不安定なバランス感覚だ。
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