いずみ

坊やに下剤をのいずみのレビュー・感想・評価

坊やに下剤を(1931年製作の映画)
5.0
超絶に面白い。ルノワールのトーキー1作目にして大傑作。バザンが「トイレの音とフェルナンデルの映画」と言ったのがよくわかるし、ルノワールの中で最もカットが少ない映画なのも納得。おまるを商売にして客を自宅に招く旦那と便秘に困ってなかなか便が出なくて困っている息子トト、それを心配して鉱水を飲めと口うるさいジュリー。
夫と妻のジュリーは一言会話するだけで会話が噛み合わず、日々喧嘩するばかり。
そんななか、客として招いた一人の男と、その男の妻と妻の浮気相手。夫は妻が浮気などしていると知らず、呑気に一人でおまるを拝見するために自宅を訪れる。
投げても絶対に割れない頑丈なおまるだと言い張っていたのに、3の合図で投げると見事に粉々。これは1000回に一回のことだから、と2回目男が今度は投げるとこれまた1000回に2回に(笑)しかも、投げてすぐに男が割れたのに気づかず、ほら?というふうに得意げになっているのが面白い。
一方、相変わらず便秘が治らない息子トトに下剤を飲ませようとするがこれがトトは絶対に飲もうとしてくれない。客の男に妻ジュリーはそのことを話すと、鉱水がいいのではと言われ、それを鵜呑みにしてトトに何度も飲ませようとするがこれもまたトトは絶対に飲もうとしない。この茶番が20分ほど続き、お客も夫もおまるどころではなくなってしまう。そこに例の客の妻と浮気相手がのこのこと訪れたことによって妻の浮気がバレ、彼らはあたふたしながら帰っていく。ラストで下剤を入れた水を間違って父親が飲んでしまい、「ママ僕飲めたよ!」と戻ってきた母親をトトが騙して終わり(笑)なんとも斬新すぎるラストに思えるが、なんせタイトルが「坊やに下剤を」なので悔しいがこの結末に納得がいくと同時にやっぱりどこか、えええ?!という感情もこみ上げる。ここまでの話はなんだったのか?と絶対に思わせない、商談のやりとりだとか、そのあとの繋ぎが本当にうますぎる。
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