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RENT/レントのkuuのレビュー・感想・評価

RENT/レント(2005年製作の映画)
4.0
『RENT/レント』
原題Rent.
製作年2005年。上映時間135分。

イースト・ヴィレッジに集うボヘミアンたちの愛と苦悩に満ちた1年間を描くミュージカル。
伝説のブロードウェイ・ミュージカルの映画化。
監督はクリス・コロンバス。
スティーヴン・ゴールドブラット。
音楽(作詞・作曲)はオリジナルの舞台の台本も手掛けたジョナサン・ラーソン。
出演はロザリオ・ドーソン、(以下はオリジナル舞台にも出演)テイ・ディグス、ウィルソン・ジェレマイン・ヘレディア、ジェシー・L・マーティン、イディナ・メンゼル、アダム・パスカル、アンソニー・ラップほか。

ミュージシャンとして大成することを夢見ている野心家のロジャー(アダム・パスカル)は、恋人の死によって精神的に打ちひしがれていた。
そんな中、階下に住んでいるエキゾチックな雰囲気が魅力的なダンサーのミミ(ロザリオ・ドーソン)に心惹かれ始めたロジャーは、彼女との新しい恋に踏み出せずに悩んでいた。。。

ブロードウェイでの爆発的ヒットから9年後の2005年末に、映画版の今作品が完成した。
当時の話題性から、物語は1990年代のタイムカプセルのような雰囲気を醸し出していたからかなぁ。
監督のクリス・コロンバスは、大胆にも8人のオリジナルキャストのうち6人を召集して、物語の構成をほとんど変えずにスクリーンに登場させてる。
故ジョナサン・ラーソンのエネルギッシュでショベルフックの様な音楽は、エイズが蔓延していた1989年のマンハッタンのアルファベット・シティの汚い場所に住む、ほとんど飢えた状態のアーティストたちのエピソードの流れの中で、今でもその激しいドライブ感を維持してる。
実際、8人の主人公のうち4人がHIVに感染してて、そのことが物語を、現在の重要な音楽と同様に共鳴させてるかな。
当時の20代の悩みを象徴するような役柄を演じたキャストが再び登場することは、30代半ばの役者が演じるとキャラの魅力が薄れてちまうように見えるし、リスクを伴う行動やとは思う。
結局、年齢は問題ではなく、舞台上で彼らが行ったような興奮を生み出す役者の能力の問題になってくる。
例えば、アンソニー・ラップが演じるマーク・コーエンは、オタクのドキュメンタリー映画監督で、友人たちの人生を率直かつ後悔しながら記録してる。
ジェシー・L・マーティンは、ドラマ『Law and Order』での長年にわたるボタンダウンの礼儀作法から解放されたみたいに、コンピュータ・プログラマーのトム・コリンズを演じてる。
このトム・コリンズは、ウィルソン・ジャーメイン・ヘレディアが演じるドラァグクイーンのエンジェルに夢中になっていて、奔放なプライドと痛々しさを持ってます。
マーティンとヘレディアの目まぐるしいデュエット曲『I'll Cover You』は、他の伝統的なカップリングがこのような目まぐるしい高みを目指すことができるほど、ロマンチックな熱気に満ちてました。
イディナ・メンゼル(アナ雪のエルサ役 声の出演してた)は、バイセクシャルのパフォーマンス・アーティスト、モーリーン・ジョンソンを実に生き生きと演じていたけど、前衛的な作品であるはずの『Over the Moon』を演じていない時でさえ、少し大げさな印象を受けた。
アダム・パスカルは、情熱的なソロ曲『One Song Glory』を披露しとったが、苦悩するシンガーソングライターのロジャー・デイビスを演じる際に、どこか迷いを感じさせた。
ミミ役には、オリジナルのダフネ・ルビン・ベガに代わって、まん丸お目めと軽妙な物腰のロザリオ・ドーソンが起用されてたけど、彼女は素晴らしい選択やと思たし、キャストの中でも最もスクリーンに精通した演技の中で、目に見えないとこまで、歌とダンスのスキルを披露してるようやった。
彼女は今作品のハイライト『Out Tonight』で、適切にセクシーな演技をしてたし。
また、モリーンの恋人であるヤッピー弁護士ジョアン・ジェファーソンを演じるトレイシー・トムスは、本作品で最も有名な楽曲『Seasons of Love』のブリッジを見事に歌い上げてあ。
演技のばらつきがあっても、全員が輝かしいパワーで歌っていましたよ。
コロンバス監督はこの事実を冒頭で明らかにし、『Seasons of Love』を、暗いステージ上でスポットライトを使って紹介された方法で、スマートに歌わせています。また、コロンバス監督は、映画的な自由を取り入れ、『Light My Candle』、
『Tango』、
『Maureen』、
『Take Me』とか、映画に再変換された幾つかのナンバーで効果を発揮させてたし、また、
『Light My Candle』、
『Tango: Maureen』、
『Take Me As I Am』とか、映画のような自由な発想で再構成していました。
中心となるアンサンブル
『ラ・ヴィ・ボエーム』のように、その高揚感はそのままに、舞台とほぼ同じように機能するものもあった。
例えば、『What You Own』じゃ、ロジャーがサンタフェで象徴的な歌詞を生き生きと表現していました。
今作品は、歌と踊りが何度も出てくるにもかかわらず、より自然なトーンで、ロバート・ワイズとジェローム・ロビンスが『ウエスト・サイド・ストーリー』を映画化したモンよりも、ミロス・フォアマンが『ヘアー』を映画化したモンに近いかな。
舞台版を愛した人は、映画版に最も心酔するか、逆に受け付けないか二分されるかも知れへんけど、ミュージカル抜きでも楽しめる作品でした。

余談ながら、
いくつかのキャラの名は、ジャコモ・プッチーニのオペラ『ラ・ボエーム』からやそうです。
画家のマルチェロは映画監督のマーク。
詩人のルドルフォは音楽家のロジャー。
哲学者のコリーヌはトム・コリンズに。
大家のベノワは大家の娘と結婚したベニーに、ムゼッタはモーリーンに、金持ちの老人アルシンドーロは若い女性弁護士ジョアンになったそうです。
音楽家のシャウナールはエンジェル、階下の若い隣人のミミは、両公演とも同じ名。
また、ジョアンはマルチェロ役をマークに。
マークはロドルフォ/ロジャーの親友としてのマルチェロを、ジョアンはムゼッタ/モーリーンの嫉妬深い恋人としてのマルチェロを表現してます。
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