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つめたく冷えた月のchikudamaxのレビュー・感想・評価

つめたく冷えた月(1991年製作の映画)
4.3
僕はこの作品を30年前にイタリアのフィレンツェで観た。フランス語の映画をイタリアン語の字幕で観るというまったく言語がわからない状態だった。それでもストーリーはわかるもので、朧げにこの映画の記憶があった。しかし、そのタイトルやスタッフ、役者たちの事はわからなかった。
それで、娘にその話をしたら早速しらべてくれてネットでパンフレットとDVDを見つけ出しプレゼントしてくれた。内容はある程度は覚えていたものの映像は記憶から抜け落ちていた。ただこの映画が持つ妙な魔力のようなものが頭から離れず、ずっと気になっていた。そして、再会するも驚きの感動があった。好きな作家の一人、チャールズ・ブコウスキーがこの映画の原作であった事とある写真展でブコウスキーのポートレート写真(撮影高橋恭司)を同時に観る機会があったという事。写真は前から知ってはいたものの、生のプリントを拝観する機会はなかなかない。長々と個人的な話になってしまったが、この作品が僕にとって特別なものだった。
屍姦を題材にした本作はその内容からしても埋もれてゆく定めにあるのかも知れないが、作品としては異才を放つほどの傑作だと思う。映像表現に人物像の描写が儚くもせつなく描かれている。人間の触れてはいけないタブーをこの作品は問いかけている。
僕の記憶が違っていたのはラスト、死体が人魚のおびれになって泳いで海に帰ってゆくと錯覚していた。
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