黒猫ぽち

真昼の暗黒の黒猫ぽちのレビュー・感想・評価

真昼の暗黒(1956年製作の映画)
5.0
この映画のことを知るまで、「八海事件」という事件のことを知らなくて、Wikipediaの記事を読み、こんな事件があったんだ…と知った次第。

その上でのこの作品、実に面白かったです。

強盗殺人事件で、冤罪を主張する被告人の側から事件を描いているので、係争中だからと圧力をかけた最高裁判所。対する脚本家 橋本忍は「絶対に無罪、もしも違ったら映画作りをやめる」と心に決めて制作続行、圧力に屈しなかったとか。

こういう腹の括りの上に描かれているからこそ「まだ最高裁がある!」という最後のセリフが響いてくるのかもしれない。

冤罪が疑われる事件がいくつも知られていて、冤罪が確定した事件を振り返ると「こんなふうに冤罪って起きてしまうんだな」と"あとから"思うことはあるんだけど、大抵は杜撰な捜査、誰かの思い込みが根っこにあるようです。この事件もそう。まさに警察の杜撰な捜査、安直な筋立てと思い込みのせいでこの事件は起きた。そしてその杜撰さ、安直さは「真昼の暗黒」の中にくっきりと描き出されたのでした。

自分が冤罪に問われたらこんなふうにはとても言えないだろうけれど、実に面白い映画でした。
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