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復讐するは我にありのRyuのレビュー・感想・評価

復讐するは我にあり(1979年製作の映画)
3.7
昭和39年初頭。逃亡を続けていた強盗殺人犯の榎津巌がついに逮捕された。榎津は時には弁護士、時には大学教授 と素性を偽りながら捜査の目をかいくぐっていた。抱きたい時に女を抱き、金がなくなったら、騙し取ったり、殺して強奪したりしていた榎津。彼は警察の取り調べで、最初の殺人から捕まるまでの経過を語る。

戦後最悪の連続殺人 と言われた西口彰事件を題材とし、直木賞を受賞した佐木隆三の長編小説を映画化した作品。第3回日本アカデミー賞を総なめにした。
タイトルの「復讐するは我にあり」とは新約聖書に出てくる言葉で、悪い奴に報復するのは神様である という意味だそうです。原作者の佐木隆三は主人公を肯定も否定もしない気持ちを込めてこのタイトルをつけたそうです。
緒形拳演じる主人公は、自身の欲にめちゃくちゃ忠実で、まさに獣のような男です。最低最悪な男なのですが、妙に嫌悪感とかはそこまで抱きませんでしたね。完全に悪に振り切っているからか、なんか清々しささえ感じてしまう始末です。これが魅力的な悪役ってやつなのでしょうか。劇中の言葉を借りると、なぜ惹き込まれるキャラクターなのか ワシにもよう分からん です。
悪魔のような榎津巌という男の根底には父親の存在があったのだと思います。幼少期から、弱々しい父親に嫌悪感を抱いており、ある種、父親への反抗みたいなものもあったのかもしれませんね。そしてラストの父親のセリフ。あれには巌もしてやられた って感じでした。憎しみが殺意へと変わった瞬間ですね。
旅館の女将 ハルに対しての巌の最後の行動。あれは自身のためだけではなかったのでしょうか。彼女への想いは少なからずあったと思います。
全編に滲み出る暴力と性。今ではあまり見れないであろう昭和らしい光景は非常にエネルギッシュでいてカタルシスを感じます。緒形拳、三國連太郎、倍賞美津子、小川眞由美など演者の好演も相まって、パンチの効いた凄みを感じる作品でした。
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