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THIS IS ELVISのAirconのレビュー・感想・評価

THIS IS ELVIS(1981年製作の映画)
3.7
このドキュメンタリーを観るとまただいぶ印象が違う。

このドキュメンタリーの趣旨ではまったくないが、時代なんだろうけど、どこにでもカメラが先回りしてエルヴィスのすべてをコンテンツ化しているな、という印象と、周りの人間、妻や友人たちがまともだったのか?、という疑問があった。

とくに妻は14歳からエルヴィスマネーどっぷりで、「贅沢が当然」というか頭おかしくなっていても不思議ではない。
子供の時からそんな生活だったら「落ち目のエルヴィス」に耐えられるのか、突然離婚を突きつけてきたのもエルヴィスだけが問題ではない気もしてくる。

まわりの友達との関係も、「キャデラックを100台も友達に贈ってた」という通り、エルヴィスはたぶん素朴な田舎者で、人に喜ばれるのが嬉しかったんだろうなという感じはするのと、「大量の金が入ってきて周りの人間を含め狂う」という、今では定番の現象を、まったくノウハウが共有されていない時代だった、つまり初めて発生しているのではないか、という印象がある。

金の切れ目が縁の切れ目で、訴えられ、エルヴィスの周りからは人が去り、そのときの彼にはもう、公演で得られる肯定感しかなかったんじゃないかな。
だから薬で合間を耐えて公演を繰り返すという、「公演依存」「ファンの愛情依存」になる経路が周りの人間によっても整えられている。

映画の『エルヴィス』では、妻が最初14歳だったことは言われてなかったし、ヒッピー系若手プロデューサーたちもパーカー大佐との対比でまともだという描写だった。
父親が母の死後、すぐに再婚していることも伏せられていたし、家にたむろしている地元の友達的な取り巻きもほとんど描写されていなかった。
(最後のステージも普通に立ってる!?)

だけど、彼の主観を想像してみれば、より大切なのは「いつも身近にいる周りの人間たち」で、映画の様に「パーカー大佐にしてやられた」という視点はあったにしろ、周りの人間が離れていったことはかなり大きかっただろうと思う。


「テクニカルアドバイザー、トムパーカー大佐」であるこのドキュメンタリーと、『エルヴィス』の映画と、実際の公演『エルヴィスオンステージ』で、それぞれの恣意で「エルヴィス」を観て、なんとなく自分的エルヴィス観が見えてきた。
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