天豆てんまめ

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序の天豆てんまめのレビュー・感想・評価

4.1
庵野秀明のプロフェッショナルの流儀を観て、改めて彼が命を削ってエヴァと生きていたか、エヴァを生きていたかが良くわかる。私がアニメシリーズを観ていたのは四半世紀前。新劇場版の序も13年前。新作を観てだいぶ経ってもレビューを書く気にならない。なぜなら、書いたら終わってしまうような気がしたから。エヴァのレビューを書くのはエヴァにさよならを言うようだ。今、全て観終えて思うのは、キャラクター一人一人への愛着だ。

全て見終えて改めて序を観ると、冒頭からみさとさんの明るさが癒される。
「ごめん、お待たせ!」「みさと、でいいわよ。よろしくね、碇シンジくん」

そして父との不条理な対面。全てはここから始まる。ゲンドウという父親を持つ悲劇。「乗るなら早くしろ、でなければ帰れ!」やっぱりひどすぎ 笑

優しかったミサトも容赦なく「乗りなさいシンジ君、何のためにここにきたの。逃げちゃだめよ、お父さんから。何よりも自分から」って強引過ぎる大人たち。初号機との対面からわずか数分の大人たちの圧が強すぎ。昔観た時、シンジは弱虫かと思ったけどこんな状況で生死を賭してエヴァに乗らざるを得ない14歳シンジは勇敢な男の子だ。

ボロボロ包帯状態のレイ登場からの「逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ……やります、僕が乗ります」からのエヴァ初号機初歩きでこけて容赦なく襲ってくる第4使徒にパニック状態で首掴まれて頭に光線ズガーン血ブシャーからエヴァ再起動で暴走ATフィールドを破りウォー吠えてコアぶっ刺してブシャー使徒殲滅させ赤い血の雨の中、歩くエヴァ初号機の戦慄。

中盤はミサトとのプハーッな生活やトウジから妹の件で殴られたりトウジとケンスケをエヴァに乗せ活動限界までナイフ刺しまくり暴走したり、ミサトに叱られ家出したり、レイの家で父親メガネ発見してこけて全裸のレイに覆いかぶさり胸触って平然と「どいてくれる」定番 笑 ラストに向かって旧よりちょっと温かい雰囲気になっている。シンジへの応援度が高くなってる。「シンジ、たのむで」「碇、頑張れよ」「私も初号機パイロットを信じます」そしてヤシマ作戦はシン・ゴジラに継承される。

レイの「いいえ、あなたは死なないわ。私が守るもの」からの守るレイと撃つシンジで使徒の断末魔の叫び。ハッチを開けて「別れ際にさよならなんて悲しい事言うなよ」「笑えばいいと思うよ」からのレイの笑顔の癒し。カヲルくんがスーッと現れ、「また3番目とは変わらないね君は、会える時が楽しみだよ、碇シンジくん」。

イッツオンリーラブ♪
もしも願い一つだけ叶うなら♪
君のそばで眠らせてどんな場所でもいいの♪
ビューティフルワールド♪
迷わず君だけを見つめている♪

全ては巡っていく。

エヴァの呪縛から卒業した庵野秀明監督。
ファンもまた卒業できるように、シン・エヴァンゲリオンは創られた。でも、卒業したくないファンも多いだろう。余韻に浸り続けたい人も。今、完結したからこそ、エヴァ・シリーズの1シーン1カットが愛おしい。

エヴァは卒業ではなく還る場所でも良いのかもしれない。